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コーヒーの焙煎度とは?シナモン、シティ、フレンチローストなど8段階


コーヒーの味を決める重要な焙煎の工程

コーヒーの果実の種子である、コーヒー豆。生豆は淡緑色で、コーヒーらしい味も香りもなく、これに熱を加えて「焙煎(ばいせん)」することではじめて、色や香りと味のある、飲むことのできるコーヒーとなります。

「焙煎」はコーヒーの味や風味を決める非常に大切な工程であり、その焙煎を司る、焙煎士の技術や考え方にはもっとフォーカスが当たるべきだと私たちは考えています(そのため、CROWD ROASTERというサービスは焙煎にフォーカスしています)。

コーヒーの風味は、豆に含まれる成分が加熱されて化学変化を起こすことで生まれます。
淡緑色の青臭い生豆も、焙煎することで香りやフレーバー、酸味、苦味などが生まれるのです。

そして加熱する時間や温度、熱の加え方(過程)によって化学反応が変化し、生豆から引き出される風味が変わるため、コーヒーの美味しさは焙煎に大きく左右されます。焙煎は生豆の選び方に次いでコーヒーの味を決める重要な工程といえるでしょう。

そんな焙煎の中でも今回のテーマは「焙煎度」。

そのコーヒーがどのような焙煎がされたのかというのは、コーヒーの風味にとってとても重要です。
「焙煎度」はその一つの指標となるものです。

ただ、焙煎度に共通の基準というものは存在しないので、目安として考えるものとなります。

深い関係がある焙煎度と香りや味

焙煎度は、コーヒー豆にどれくらい熱量を加えたのかの指標であり、一般的には焙煎時間と比例します。
熱量が少なければ、焙煎度は浅く、大きければ焙煎度は深くなります。
焙煎度が浅ければ、コーヒー豆の色は薄く、深ければ色が濃くなり油分も滲み出てきます。

これは異なる焙煎度の豆を見たことのある方なら、イメージしやすいと思います。

焙煎度により、味の傾向も変化し、焙煎度が浅ければ、酸味が強く、苦味が弱い傾向があり、焙煎度が深ければ、苦味が強く酸味が弱い傾向にあります。

浅い焙煎の特徴

酸味が強く、フルーティーさなどが感じやすい。その豆が持つ香りが幅広くあらわれる。口当たりやボディは軽い。

深い焙煎の特徴

苦味が強くなり、香りはロースト由来の香ばしさなどが強くなる。口当たりには濃厚さが出て、ボディもしっかり出る。

8段階の焙煎度

焙煎度は、大きく分けると、浅煎り・中煎り・(中深煎り)・深煎りという形になります。

より細かい段階分けとして、日本では8段階の区分が使われることがよくあります。

これは浅煎りから順に、ライトロースト、シナモンロースト、ミディアムロースト、ハイロースト、シティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンローストという8段階です。

CROWD ROASTERもこの8段階で焙煎度を表示しています。
これは焙煎士がより細かいニュアンスを表現できるようにという理由から。
もちろんこの焙煎度の判断は、それぞれの焙煎士が行うものなので、同じ焙煎度でも、焙煎士が違えば焙煎度が異なることがあります。

ちなみにこの8段階の区分けは、古い時代のアメリカで使われていたものを参考にしているといわれ、国ごとの好みを示した名称(フランス、イタリア)もあり、また「シティ」はニューヨークシティで好まれた焙煎度だといわれています。

それではあくまでも目安にはなるが、一番浅煎りとなるライトローストから、深煎りとなるイタリアンローストまで、CROWD ROASTERで使用している焙煎度を示すアイコンとともに、簡単に8段階の詳細を説明します。

先述の通り、コーヒー豆の色で明確な基準があるわけではないので、焙煎の進行段階にある1ハゼ、2ハゼとの関係を述べています。1ハゼは、豆の水分が飛んだ後に炭酸ガスにより膨張し、パチパチと弾ける音が聞こえる段階、さらに焙煎が進み色が濃くなり油分も出てくる状態でピチピチと高い音が聞こえるのが2ハゼとなります。
(焙煎の進行について詳しくは別の記事で解説する)
 
1. ライトロースト
最も焙煎が浅く、1ハゼ前後。豆はうっすらと色づく程度。

2. シナモンロースト
ライトより少し焙煎が進んだ状態で、浅煎り。名称は豆がシナモン色となる状態というところから。

3. ミディアムロースト
ここから中煎りとなる。1ハゼが終わり2ハゼの手前。アメリカンローストともいわれる。

4. ハイロースト

2ハゼの最中、もしくはその前後。少し進んだ中煎りで、中深煎りとされることも。

5. シティロースト

ここからが深煎り。2ハゼは終わり、色もかなり濃くなる。シティの名称はニューヨークシティから来ている。

6. フルシティロースト

2ハゼが収束してさらに焙煎が進んだ状態。油分により表面に光沢。

7. フレンチロースト

豆の表面に油分がかなり染み出してくる。

8. イタリアンロースト

さらに油分が表面に出てくる。炭のような色になる。
 

ここまで、8段階の焙煎度を紹介してきました。

実際は焙煎時の温度や豆の状態・時間などにより化学反応の進み具合は異なってきます。
これだけでも焙煎の世界がいかに深いかが理解していただけると思います。

焙煎によるコーヒー豆の変化

焙煎によるコーヒー豆の変化には、おもにメイラード反応、カラメル化、少糖の分解という化学反応が大きく関わっています。

メイラード反応は、糖とタンパク質(アミノ酸)によって起こる反応。物質によって多少の誤差はありますが、155℃前後で活発に反応があらわれ、「メラノイジン」という茶色い物質や香ばしさの元となる物質が生まれます。パンや肉を焼いた時の香ばしさはこの物質によるものです。

カラメル化は、糖のみを利用して起こる反応。180℃程度まで加熱すると反応が起こると言われており、茶色い物質や甘い香り・独特の苦味を持つ物質が生まれます。プリンのカラメルソースやキャラメル、べっこう飴などが、カラメル化を利用している商品の代表例となっており、反応が進みすぎると焦げてしまい苦味が増すのが特徴です。

少糖類の分解は、生豆に含まれるクロロゲン酸やショ糖など少糖類が、熱で分解され、酸味のある物質に変化すること。
クロロゲン酸は、熱エネルギーによって「キナ酸」と「カフェ酸」に分解され、さらに焙煎が進むことで、これらの成分からコーヒーの苦味や香りを呈する物質が作られます。
ショ糖は、熱エネルギーによって分解され、熱エネルギーの影響をあまり受けていない焙煎の初期から分解され、「酢酸」や「ギ酸」などの有機酸が生成します。これらが浅炒りのコーヒーの酸味をつくり出しています。

浅い焙煎では熱分解によって生み出された酸味が目立ちますが、徐々にメイラード反応やカラメル化による香ばしさ・苦味が増加していきます。
さらに深く焙煎することで豆の色は黒さを増していき、コーヒーらしい濃厚な味わいとともに強い苦味が出てくるというわけです。

実際は焙煎時の温度や物質の状態・時間などにより化学反応の進み具合は異なっていきます。
こうした化学変化はコーヒーに含まれる物質のごく一部の変化です。
ほかにもさまざまな成分が変化し、それぞれのコーヒーの独特な風味が生み出されるのです。

それをどのように引き出すのかが、焙煎士の腕の見せ所となります。
その方法は、焙煎士によってさまざま。その個性が発揮される部分なのです。


2024.6.3
CROWD ROASTER