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ポットとコーヒーのいい関係 (1) ユキワポット

皆さんハンドドリップでコーヒーを抽出するのに、どのポットを使うのがいいのか悩んだことがあると思います。
私もハンドドリップでコーヒーを淹れるようになってから、色々なポットを試してきましたが、なかなか自分に相性の良いポットを見つけることができませんでした。
本企画では、そんな経験をもとに、ポットとコーヒーのいい関係について考えていきたいと思います。
第1弾は私が最も愛用している「三宝産業 ユキワポット」です。

当時バリスタとして勤務していた店舗が「ユキワポット」を使っていたということもありますが、細口ポット、1杯取り専用ポット、電気ポットなど、多種多様のポットを試してきた中で、「ユキワポット」に落ち着きました。(今でも銘柄や出したい味わい次第でポットを使い分けています)

三宝産業 ユキワポット

 
三宝産業は金属加工で有名な新潟県燕三条に位置する企業で、美しいデザインとクオリティの高い商品で世界的にも信頼のあるブランドです。
そんな三宝産業から様々なバリエーションのコーヒーポットが出ていますが、その中でも「COFFEE POT/M-TYPE Mコーヒーポット」を愛用しています。

自由自在な味を表現できるユキワポット

ユキワポットの最大の魅力は「幅広い味を表現できる」ことにあります。
それを可能にしているのは「注ぎ口の太さ」です。
コーヒーポットというと注ぎ口が細いものが一般的です。しかし、ユキワポットは一般的なものと比べるとかなり大きな注ぎ口になっています。注ぎ口が細いことで安定した湯の太さでお湯を注ぐことができるというメリットがありますが、細湯でしか湯を注ぐことができないため、注湯スピードの幅が狭く、その分表現できる味わいの幅も狭まってしまいます。逆にユキワポットの場合は注ぎ口が太いため、注湯スピードを変幻自在に操ることができ、幅広い味わいの表現が可能です。

コーヒーは農作物ですから、同じ銘柄でもまったく同じ豆面、密度ということはほとんどありえません。そのため、こだわり抜くのであれば1杯ごとにアプローチの仕方を変える必要があります(違う銘柄だとなおのこと)。このアプローチの変化に対応できるのはユキワポットの太口だからこそといっても過言ではありません。
華やかな香りを出したい銘柄は太湯でサラッと注ぐことで、クリアな味わいにしながらも華やかな香りはしっかりと残す抽出。甘みやとろみのある質感を出したい銘柄は細湯でじっくりと抽出することでフレーバーをしっかりと取る。このようにその銘柄ごとに合わせた味わいの表現をユキワポットは叶えてくれます。

グリップのフィット感

注ぎ口の太さの他にグリップの握り心地も愛用している理由の一つです。
ユキワポットのグリップは丸みを帯びていて、ドッシリとした形状です。この丸さと重量感が握ったときに手にピッタリとフィットしてくれます。
しっかりとフィットすることで脱力した状態でもポットを持つことができ、余計な力が入らない自然なドリップを実現してくれます。そうすることで、スムーズなポットコントロールを実現し、雑味のないクリアな味わいに抽出することができます。
脱力した状態でのドリップができるようになるまでは、練習も必要ですが、それを会得したときには今までにない自然体での抽出を実現してくれると思います。


慣れるまでには時間がかかるかもしれませんが、ユキワポットを自由自在に使いこなせるようになることで、今まで抽出できなかった味わいも作ることができるようになります。
それほどまでにユキワポットで作れる味わいの幅は広く、可能性があります。
ただ、私が使っているユキワポットは既製品のものから、さらに追い込みをかけてカスタムチューンを施しています。
ポットの中にある目皿を取ったり(目皿無しは河童橋で買えます)、注ぎ口を削ることでより太湯で注げるようにしたり、グリップ部分のフィット感を調整したりなどなど、、。
そんなマニアックなお話はまたじっくりとお伝えできればと思います。

ドリップレシピを変えてみることはあってもポットを変えてみることはあまりないと思います。それぞれのポットに特徴があり、そのポットに向いている使い方があります。
ハンドドリップがマンネリ化してきていると感じる方は、銘柄ごとにポットを変えてみるのも面白いと思います。ポットでどのような味の違いが出るのか、ぜひ、皆さんも色々なポット試してみてください。
これからも様々なポットをご紹介していきますのでお楽しみに!
 

2023.03.29
Hiroto Usukura