STORY

LEAVES COFFEE 石井康雄焙煎士×石谷貴之バリスタ「エスメラルダ スペシャル」カッピング対談!

 
パナマ ゲイシャの代名詞であるエスメラルダ農園、その最高峰ブランドである「エスメラルダ スペシャル」のマイクロロットを、CROWD ROASTERに参加する日本を代表する焙煎士の方にローストしてもらうという、まさにスペシャルな企画がCROWD ROASTERで進行中。

この企画の第2弾となる、「ゲイシャ ウォッシュド トラピーチェ 65AS」の焙煎していただいたのは、「町のロースタリーから世界へ」というコンセプトを掲げ、それを体現する活躍をされている、LEAVES COFFEE ROASTERSの石井康雄さんです。
 

この特別なゲイシャと、石井さんの焙煎の魅力についてお伝えするために、CROWD ROASTERのアドバイザーを務める、バリスタ日本チャンピオンの石谷貴之バリスタと、石井康雄さんとの対談をお届けします。

LEAVES COFFEE ROASTERSで焙煎後のコーヒーをカッピングしながら、お話いただきました。
(聞き手:CROWD ROASTER 臼倉空飛)

カッピングでのインプレッション

 
 
 
石井:「プライベートコレクション」(エスメラルダ スペシャルのひとつ下のランクのエスメラルダ農園ゲイシャ)にはないフレーバーがたくさんありますね。ジャスミン系がしっかり出ている感じ。石谷さんはどうですか。

石谷:まずは、フレーバーがちゃんと出ているなっていう印象です。フレーバーが来て甘さが来て、という意味では、素材を感知しやすい。

石井:……ちょっとコーヒーブロッサム(コーヒーの花)のような蜜っぽさもありますね。温度が下がると表情も変わってきました。フレーバーアロマがちょっと落ち着いてきて、甘さが見えるようになってきた。

石谷:僕はフレーバーの“色み”が変わったかな。マスカット系といった緑系からオレンジ系、赤系っぽい、紫も少し出てきているかなという印象です。

臼倉:LEAVES COFFEEでは他の農園のパナマ ゲイシャも扱っていますが、それとエスメラルダ ゲイシャは違いますか?

石井:全然違うと思います。聞いた話と自分で焙煎してみた印象で合っていると思ったのは、最近はプロセッシング(生産処理、精選)で品質を高くしていくのが流行なんですが、エスメラルダ農園はその印象がない。オーセンティックなウォッシュドやナチュラルなので、ゲイシャ本来の素材は、パナマの中ではエスメラルダが一番感じやすいんじゃないでしょうか。
 

臼倉:今回のゲイシャ ウォッシュド、改めて一言で言うとどんなコーヒーですか?

石谷:ジャスミン、ですね。あまりいろいろな情報を伝えるよりも、純粋に飲んで「これがゲイシャなんだな」とキャッチしてもらうだけでいいかなって思います。
 
ここがゲイシャの基本みたいな感じですね。いろいろなゲイシャが出てきていますが、基本を再確認できるという位置付けです。コーヒー好きな方には一度は通ってほしい農園です。

石井:石谷さんも言ってくれたんですが、「これぞ、The パナマ・ゲイシャ・ウォッシュド」というコーヒー。「ゲイシャって何?」という方が知るきっかけになるコーヒーかなと思います。

コーヒーなのにフローラルを感じて、ハチミツとかシロップみたいな甘さを感じられる。それを経験してみてください」という感じです。

ロット番号がついている品質管理されたゲイシャのウォッシュドなので、オーセンティックにゲイシャのウォッシュドを知りたいということであれば入門編としても、コーヒーに詳しい玄人の方でもどちらも楽しめるかなと僕は思います。

難しいことを考えなくても感じ取れるようなコーヒーですし、今回はそう感じ取れるように焙煎できたと思います。

0.5秒でフレーバーが変わってしまう、繊細さを求められた焙煎

 
臼倉:焙煎する上で気を付けた点はどんなところですか?

石井:焙煎に関して言いますと、すごく繊細な豆なので、ちょっとでも(最適な)焙煎を超えるとフレーバーがなくなってしまいます。

ゲイシャには「リモネン」という香りの物質が含まれているんですが、熱にすごく弱い。そもそも繊細なエスメラルダのゲイシャ・ウォッシュドなので、そのリモネンを残しつつ、今回は入門や玄人さんのどちらにも向けた焼き方をしたつもりです。とはいえ、あまり難しく考えずに飲んでほしいと思います。

臼倉:実際にサンプルで焼いて、本バッチで焼くと、実質2〜3回しか焼けないわけですが、そこにドラマとかは起きたりしましたか?

石井:2回しかチャンスがないし、でも、焼くならちゃんとわかりやすいゲイシャにしたいし、焙煎のクオリティもつけてあげたい。

サンプルを焼いた時は水分がたくさんある豆で、そもそもチェリーの糖度も高いということは数値を測った時にすべて理解できていました。けれど、実際に焼いてみたら思った以上に“いいコーヒー”でした。なので、焙煎の最後の爆ぜている時とか、すごく元気なんですよね。パチパチっとなって、温度のグラフが急激に下がってしまうので、負けじと火力を当てていくのですが、ここをビビらずにやるのがすごく難しい。

しかも、火を当てる=おいしいポイントがどんどん狭くなってしまいます。フレーバーを取るためには火を当てなきゃいけないけど、その時間が本当に約0.5秒。1秒遅れたらもうその味はなくなっちゃう、そういう話なんです。
 

豆の香りを嗅ぎながら、爆ぜてからは1秒に2回ぐらいサッサッと嗅いでいって。この時間はかなり気を遣いました。
今回はもう2回しかチャレンジがないっていうのと、思った以上にいいコーヒーだったから、僕も自分へのチャレンジというか。

これが店で出すためのプロダクションローストだと、もうちょっと火を入れて普通に美味しくて甘いくらいに落ち着かせるので、ここまでチャレンジはしないですね。

これくらいでうまく焙煎がハマると、エイジングしてすごく長く飲めるんですよね。2カ月後とかでもおいしく飲めますし、きっとまた味も変わってきますよ。

長く時間をかけて楽しむ、この上なくクリーンな一杯

 
臼倉:具体的にはどんな変化が感じられそうですか?

石井:時間が経つと、鼻と口からキャッチするフレーバーはやや下がってくるんですけど、鼻から入ってくるアロマが上がっていきます。パッケージを開けて豆面だけを香ってみてすごく甘い香りがするときは、時間が経っていて、コーヒーとして液体にして飲むと、フレーバー自体は弱くなっている、でもアロマとして鼻だけから入る情報があるから、それも美味しく感じられますよ。

臼倉:かなり時間をかけて飲んでいくことができるんですね。

石井:そうですね。こういうコーヒーは1週間に1杯ずつ、何週間にもわたって飲んでもらった方が、先週よりもこう変わった、というところが楽しめるんじゃないかなって思います。今日、明日と飲む感じではないかなとは思いますね。
 

石谷:バリスタの立場からいうと、今回の石井さんのエスメラルダはとてもクリーンです。よくコーヒー業界で言われる「クリーンカップってどういうものなの?」ということを感じていただけると思います。

実際、何をもってクリーンカップというのかは、わかりにくいと思うんですけど、入り口はもちろん、ちゃんとした質感があって、後味もすごくキレイで、でも味がなくなってしまうキレイさではなくて、余韻がすごく甘く長くて、かつキレイなコーヒーです。それは生豆の品質もあるんですけど、フレーバーがあるのにこれだけキレイなコーヒーというのは焙煎の技術ですし、なかなかないと思います。そこは石井さんの技術力ですね。

石井:ありがとうございます。クリーンに仕上げる時に、味がショートなだけという焼き方は簡単なんです。ただ、甘くて長い余韻というのはとても難しいので、僕もそうしたいと考えているところを、石谷さんがキャッチしてくれてうれしいです。

ハンドドリップでの抽出のコツは?

 
臼倉:今回買ってくださる方は、ハンドドリップで楽しむ方が多いと思うんですが、気を付けた方がいいことはありますか?

石井:LEAVES COFFEEではだいたいコーヒー:水=1:16〜1:15くらいのレシオ(比率)です。湯の温度は90度からスタートしてみて93度までですが、このコーヒーはフレーバーを楽しみたいのであれば、湯温は高めで早めに抽出してもいいかもしれません。トータル抽出時間は2分〜3分で、3分ぐらい引っ張っても美味しいと思います。注ぎは4〜5回で、回数よりも抽出時間の方が関係しています。長い方がボディが出やすく、短い方がちょっと軽めになります。

石谷:味の基準を誰かに頼る必要はなく、特別なゲイシャだからこそ抽出方法を変えたりする必要もありません。いつもと同じ淹れ方でないと違いもわかりませんよね。 ひとつ気をつけるとしたら、豆とお湯の比率、つまり濃度です。濃すぎる、薄すぎると思ったら比率を変えてみて、自分のベストバランスを見つけてみてください。

石井さんらしい繊細でパワーのあるコーヒー

臼倉:石井さんの中で、自分が大事にしている味はどういったものでしょうか?

石井:僕は「甘くてクリーン」というのがまず大前提にあって、フレーバーとかアロマは出たらラッキーくらいなイメージです。甘くてキレイで質感が良くて、というところにフォーカスを当てています。

臼倉:個人的には今回、エスメラルダのウォッシュドが手に入るということで、非常にテンションが上がりました。これを誰にどう焼いてもらうかと悩んで、石井さんはナチュラルよりはウォッシュドの方が適任かと今回選ばせていただきました。

石井:選んでいただいてありがとうございます(笑)。もうその通りで、自分で個人的に飲むのも焼くのもウォッシュドの方が好きですし、アロマコントロールもしやすいですね。

臼倉:石谷さんから見て、石井さんらしさはどんなイメージですか?

石谷:アロマがすごくて質感もあるのにクリーンな、絶妙なところを突いている焙煎だと思います。繊細だけどちゃんとパワーがあるんです。普通はどちらかが強い印象になりがちですけど、石井さんのコーヒーは両方を持っているから、すごく研究して検証して、ピンポイントで出してくるなっていう印象ですね。 今回の焙煎でも、そうした石井さんらしさというのを、存分に感じてもらえると思います。
 
 
石井さんもチャレンジだったと語ってくれた今回の「ゲイシャ ウォッシュド トラピーチェ 65AS」の焙煎。
いつも以上に攻めた結果、アロマ、フレーバー、質感がこの上ない絶妙なバランスで、素材の持つ繊細さを最大限に引き出され、さらに長く変化を楽しめるコーヒーとなりました。
 
ゲイシャを語るのであれば、一度味わってほしいこの珠玉のエスメラルダ ゲイシャ。人生を変えるほどの香りと味わいを、ぜひ体験してみてください。

 
 

PROFILE

 
 
石谷 貴之
ジャパン バリスタ チャンピオンシップ(JBC)で、2017年、2019年と2回の優勝。日本代表として出場したワールド バリスタ チャンピオンシップ2022(WBC)で4位獲得。バリスタ育成やトレーニング、ショップのディレクション、イベント内でのコーヒーサーブ、セミナー開催など幅広く活動。CROWD ROASTER アドバイザー。

石井 康雄
「町のロースタリーから、世界へ」をコンセプトに2019年より焙煎業をスタートさせ、Probat UG-15、Giesen W6A、Stronghold S7Xの3台を稼働させている。 アメリカのコーヒーメディア「Sprudge」のNotable Roaster(注目すべきロースター)部門で、2年連続日本で初めてのノミネートを果たす。国内外のコーヒーラバーや、老若男女問わず地域の住民が訪れるロースタリーでは、日常の中の非日常体験に特化した、ワールドクラスの味わいと体験を楽しめる。