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コーヒーの淹れ方「プアオーバー」とは?

日本でも時々耳にする「プアオーバー」というコーヒー用語。
これは抽出方法のことです。

「プアオーバー」とはどんな抽出方法なのか。
そしてその流行について、今回は深掘りしてみたいと思います。
 


プアオーバー=Pour Overとは、Pour=注ぐ、Over=上から、という意味で、上から注ぐという抽出方法、つまり日本で言うところの「ハンドドリップ」のことです。アメリカ西海岸を中心に広まった抽出方法で、浅煎りの豆をじっくりと丁寧に抽出するのが特徴。
いわゆるサードウェーブのコーヒーショップなどで提供されています。

ニューヨークタイムズで紹介されたプアオーバー

 
2011年3月の「The New York Times」の記事では、Pour Over、もしくは単にPour、またはHand Pourなどと呼ばれていたことが紹介されています。どれも意味は同じです。

この記事には、2009年までにはブルーボトルコーヒーやサンフランシスコのリチュアルコーヒーロースター、シカゴとロサンゼルスのインテリジェンシア、マサチューセッツ州アーリントンのバリスモなどのコーヒーショップに、プアオーバーで用いる日本製のコーヒー器具が備えられたと記されています。

また2010年には、全米に店舗を持つキッチン用品を中心としたセレクトショップ、ウィリアムズ・ソノマで、ハリオのケトル、グラインダー、フィルター、ドリッパーなどが売られるようになったことで、アメリカの家庭へもプアオーバーが広まるきっかけとなったことが紹介されています。

日本がルーツだったプアオーバー

 
アメリカでインスタント以外のコーヒーといえば、コーヒーマシンで淹れたものか、エスプレッソマシンで淹れたものというイメージでした。
 
そこに登場したのが、日本から「発見」された、プアオーバーだったのです。
日本で独自の進化を遂げたハンドドリップは、アメリカの新興のコーヒーショップにとって新鮮なものでした。

また、その味わいも彼らの目指すものに合致していました。産地や品種がもつ風味の複雑さがカップに表現され、舌触りは滑らかで、透明感のある余韻が続くこと。こうしたコーヒーに魅了され、プアオーバーという抽出方法が取り入れられていったのです。

また、使用する器具によって味わいのバランスが変化するため、選ぶ楽しみがあることも知られていきました。例えば、ハリオのV60はより繊細で、透明感が際立ち、カリタのウェーブドリッパーは甘くまろやかなバランスとなる傾向。ペーパーフィルターだけでなくメタルフィルターやネルフィルターの器具もそれぞれに特徴があることが今では知られています。

ちなみに日本風の「ドリップ」という英語は、液体が滴ることを指しており、コーヒーについてはほとんど使われません。

ヨーロッパでの呼び方は?

さて、これらの抽出方法のもう一つの呼び方は「フィルターコーヒー」です。
フランスなどの欧州の一部の国では、エスプレッソマシンを使わないハンドドリップ、サイフォン、エアロプレスなどをまとめて、フィルターコーヒー(フランス語ではカフェ・フィルトル)と呼んでいます。
 


ちなみにフランスではエスプレッソ以外の抽出法としてもっとも広まっているのがコーヒープレスで、これはフランス以外の国々でフレンチプレスと呼ばれています。

欧州の国々では、特別にハンドドリップだけを指す用語はないようですが、浸透式のドリップの起源はフランスの「ドゥ・ベロアのポット」とされているし、ペーパーフィルターを最初に考案したのはドイツのメリタでした。

西ヨーロッパはまさにハンドドリップ発祥の地だといえます。
そこから(アメリカを経由して)日本に伝わり、今度はそれがアメリカに逆輸入されるという形でまた欧米で注目される抽出方法となったのです。
 
もっとも手軽でしかも奥が深いプアオーバー、つまりハンドドリップ。
CROWD ROASTERではさまざまなレシピも紹介していますので、ぜひ参考にしてみてください。
 
 
2024.1.21
CROWD ROASTER