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コーヒーの銘柄を読み解く (3) 国、農園、プロセス

 
コーヒー豆を買う際、またはコーヒーショップや喫茶店でコーヒーを注文する際、複数のコーヒーの「銘柄」があって迷う、という経験は誰しもあるはず。そんな時にまず確認するのは、「銘柄」の名称。
 
この連載では、その名称について深掘りしています。
これまで、「ブルーマウンテン」や「キリマンジャロ」といった「特定銘柄」についてや、「AA」や「SHB」と表記されるコーヒーの等級(グレード)などを紹介しました。

今回は、コーヒーショップなどでコーヒー豆を買う時につけられている名称について取り上げたいと思います。
 
スペシャルティコーヒーの世界では、コーヒー豆のトレーサビリティが重要視されており、次のような要素が組み合わされて銘柄とされることが多いと、以前も記しました。
 
・生産国
・生産地域
・農園名
・コーヒーの品種
・プロセス
・生産者による通称
 
これらのうち、コーヒーの特徴を表すのに適したものが選ばれると思いますが、やはりもっともよく使われるのは、「生産国」と「農園」でしょう。
 
私たちのCROWD ROASTERの「生豆」紹介でも銘柄一覧では「国名」+「農園名」+「プロセス名」の表示

国名が採用される理由

一般的には、生産国によってコーヒーの香味・味わいの方向性に違いがあるとされています。
エチオピアはフローラルで紅茶のような、ケニアはベリー系のフレーバーといった、特定のフレーバーと紐づけられていることも。
 
スペシャルティコーヒーとなる高品質なアラビカコーヒーは、生産される地域がある程度限られるため、コーヒー生産国であってもどこでも栽培されるわけではありません。
生産が多い地域の特徴が、その国のコーヒー豆の特徴とされるものに大きく影響しています。
また、生産国によって栽培される品種も、ある程度は絞られますので、それも影響しています。
さらに生産・流通の形態も国ごとに異なります(小規模農家が多いとか、ナチュラルプロセスが一般的とか、乾燥の方法とか)。
 
こうしたさまざまな条件から、その生産国の特徴やイメージというものが生まれてきます。
生産国名の表示はそれを判断するのに必要、となることが多いと思います。

農園名の表示

 
稀に、世界的に有名でその農園名が価値になっているという農園がありますが、そうした農園であれば直接的にその価値を表すものとなります。
もちろん有名でなくとも、しっかりとした品質のコーヒー豆を生産したり、先鋭的な取り組みをおこなっている農園であったりすれば、その取り組みを讃えるために、農園名を銘柄(商品)名とすることは、一般的です。
 
トレーサビリティーの担保という意味でも農園名は役立ちます。
 
ちなみに、国によっては農園名でのコーヒーの流通が一般的でない地域もあります。
例えばボリビアやペルーでは農園名をつけることがあまりなく、生産者名で流通します。
 
また、小規模生産者の栽培したコーヒーを集める農協の精選設備の名前で流通する、ケニア(Factoryと呼ぶ)やルワンダ(Coffee Washing Stationと呼ぶ)などの国もあります。
農協名となることもあります。
 
このように農園名は、バリエーションとして、生産者名や農協名、精選設備の名前が付けられることがあります。
 
また、生産地域名が付けられることもありますが、農園や農協名よりも、有名産地として名が通っている場合には、こちらが採用されることが多いようです。

プロセスや品種名

 
ナチュラルやウォッシュト、アナエロビックといったプロセス(精選、生産処理)名を銘柄に入れることもよくあります。
これはもちろん、その精選方法によって味わいが大きく異なるからです。
 
例えば、ナチュラルは甘さや質感が強くなり、ウォッシュトは酸が明るくクリーンに、アナエロビックでは独特の発酵感が出るというように、味わいの傾向が判断できます。
特殊なプロセスが行われている時も、その特徴を知ってもらうために、銘柄名とすることがあります。
 
一方、コーヒー豆の栽培品種名が入ることも。
これは「ゲイシャ」のような有名な品種であったり、珍しいものであったりする時に、取り上げられることが多いと思います。
一般的な品種では、あまり前面に出てくることはないかもしれません。
 
そのほか、特に交流のある生産者名を大きく出したり、フレーバーであったり、何かしらの愛称であったり、さまざまなものがコーヒーの銘柄名に入っていることがありますが、基本は上記のものが使われていると思います。
 
アルファベットの羅列で、何が表示されているかわからない、という場合は、それぞれどれに当たるのか切り分けてみると理解しやすいかもしれません。
 
もちろんコーヒーショップの店頭であれば、お店の方に質問すれば、詳しく教えてくれるはずです。
ここまでの情報を参考に、ぜひ細かく聞いてみてください。
コーヒーの選び方がいつもと変わるかもしれません。
 
 
2023.7.28
CROWD ROASTER