STORY

カッピング日本チャンピオンの焙煎にかける思い 石原匠真 焙煎士



昔ながらの喫茶店で味わう、コーヒーとあんバタートーストとピーナッツ──そんな独自の喫茶店文化で知られる名古屋。そんな名古屋市で、浅煎り・スペシャルティコーヒーのパイオニアとして3店舗を構えるのが、TRUNK COFFEE(トランク コーヒー)だ。

TRUNK COFFEEは、デンマークなどで単身バリスタとしての経験を積んだ鈴木康夫さんが2014年に設立。本場ヨーロッパのスペシャルティコーヒーの味と文化を、そのまま日本に伝えている。

そんなTRUNK COFFEEで、焙煎士・バリスタとして日夜コーヒーに向き合い、2022年のJapan Cup Tasters Championship(ジャパンカップテイスターズチャンピオンシップ)で日本チャンピオンに輝いた石原匠真さんが、CROWD ROASTERで焙煎士としてデビューする。

兄の影響で出会ったTRUNK COFFEE


岐阜県各務原市に生まれた石原さんがコーヒーにハマったのは、兄の影響だった。TRUNK COFFEEで毎週行われるカッピング会に参加していたという、お兄さんが淹れてくれたコーヒーを口にして、それまでにない驚きを感じたという。

「それまではコーヒーといえば、スーパーやコンビニで買うくらいで、特にこだわりはなかったんですが、それとは全く違うスペシャルティコーヒーに出会って衝撃を受けました。程なくカッピング会に一緒に参加させてもらう中で知り合いが増え、どんどんコーヒーにのめり込んでいきました」

大学4年生となり、時間があった石原さんは、東京や京都の有名店にもたびたび足を運ぶほどに。一般企業に就職してからもTRUNK COFFEE通いは続き、抽出などにもこだわり始めていた就職1年目の8月、大阪で行われたエアロプレスの大会に参戦する。予選通過は叶わなかったが、その大会で司会を務めていたのが、TRUNK COFFEEの創業者である鈴木さんだった。

「割とカジュアルに参加できる大会で、いい結果ではなかったんですが、やっぱりコーヒー楽しい、仕事にしたいって思っていて。そうしたら、たまたま大阪からの帰りの新幹線が鈴木さんと一緒になって、お話させてもらい、甘くはない世界だともうかがいました。それでもやってみたいと、その後、『TRUNK COFFEEで働かせてください』とお願いしたんです」

コーヒーを志してわずか2年でカッピング日本王者に


約半年で新卒入社の会社を辞め、本格的にコーヒー業界に携わることになった石原さんは、さっそくカッピングで勝負する2021年の「Japan Cup Tasters Championship」(JCTC)に出場。この年は予選敗退に終わってしまったものの、そこから1年間みっちり練習を積み重ね、2022年大会で見事優勝。ギリシャで開催された世界大会にも参戦し、世界の実力を肌で知る。

「JCTCは、Japan Barista Championship(JBC)やJapan brewers Cup(JBrC)のような機材や器具の準備もそれほど必要なく、8分間の本番で正確にテイスティングできる舌と体調が一番大切です。しかし、世界大会で上位に入る各国のチャンピオンは頭ひとつ抜けている印象でした。味覚や味をとるレベルも高いですが、緊張する場面の中でもマインドが安定していましたね」

カッピングは、コーヒー豆自体の良し悪しを判断するだけでなく、焙煎した豆のクオリティを高めるために、最も基礎的かつ重要な技術。その技術を磨きながら、石原さんが目標としたのが焙煎技術の向上だ。

「店で扱うコーヒー豆は、私も含めた焙煎チームが焼いているのですが、TRUNK COFFEEのコーヒーに仕上げるための焙煎機のプロファイル作りに、カッピングのスキルは大いに活用できます。自分も、焙煎チームやバリスタとこれがおいしいという味をすり合わせていく作業をしています」

スペシャルロットのために使用する、最新鋭の焙煎機「ストロングホールド」


石原さんが焙煎を始めてからは約3年。店舗にある5kg釜のProbatのほかに、石原さんが愛用しているのはスペシャルなロットの豆に使われる「StrongHold(ストロングホールド)」だ。

「ストロングホールドは、1、2年ほど前から世界的に注目されていて、2024年の焙煎世界大会で正式に採用されています。TRUNK COFFEEでも導入し、JCrCやJBCなどの大会出場者の練習などに特化した、スペシャルなロットの焙煎に使用しています」

近年、欧州を中心に広がっているサステナブル化の動きは、ガスが主流の焙煎機でも同様。CROWD ROASTERで扱う豆についても、このストロングホールドを使用して焙煎してくれるという。

「マイクロロットで細かく焼けるということと、熱風、ハロゲンによる輻射熱、ドラムヒーターという3種類の熱源を用いて細かい変化をつけられるところが強みですね。狙った焙煎、自分の作りたい味を、少し調整するだけで大幅に変更できるんです」

ORIGAMIスペシャリストによる淹れ方のコツ


TRUNK COFFEEといえば、美しいウェーブ形状のドリッパー「ORIGAMI」を生み出したことでも知られている。店頭でももちろん、ORIGAMI DRIPPERを使用してハンドドリップを行っている。

そんなORIGAMIスペシャリストの石原さんに、おいしく淹れるコツもうかがってみた。

「フィルターはコーン型とウェーブ型が使えるのですが、ウェーブフィルターの方が安定した味を作れます。ドリッパーにフィルターが密着して抽出不足が起きにくいので、抽出ムラが少なくバランスがいいです。より工夫したい人はコーン型を使うと横からお湯がどんどん抜けていくので、クリアですっきりした味になります」

味はもちろんだが、コーヒーを味わう雰囲気づくりにもORIGAMIをお勧めしたいと石原さん。

「ドリッパーの素材はセラミックとプラスチックで、カラーバリエーションや見た目、形もユニークです。ドリッパー以外にもカッピングツールやスプーン、カップなどもあるので、初心者にも楽しんでいただけると思います」


<石原さんおすすめのORIGAMIドリッパーレシピ>


FILTER:WAVE FILTER
豆:15.0g 中細挽き
お湯:210ml 90℃

注湯
1st:50ml 0:00〜0:30
2nd:150ml 0:30〜1:00
3rd:210ml1:00〜2:00

POINT
・WAVE FILTERを使う方が抽出にムラができにくくバランスの良い味が作りやすい。
・抽出する前にフィルターをセットし、お湯を注ぎフィルターをリンスすることとドリッパーをしっかり温める。
・1st:素早く粉全体にお湯が注ぎしっかり蒸らす。
・2nd:中心に注いでから細いお湯の線で全体を攪拌させるように回しながら注いでいく。
・3rd:最後は優しく回しながら粉全体に均一な抽出ができるよう注いでいく。

購入者向けに焙煎プロファイルも公開!?

今回、CROWD ROASTERのローストイベントでは、ストロングホールドを使用して焙煎する予定だ。

「CROWD ROASTERでは見たことのない豆を焼かせていただけるので、遊び心のある面白い挑戦になるかなと思っています。もちろん、ストロングホールドで自分が作りたい味を引き出すためのプロファイルは研究できています。ただ、どちらかというと安定した味というよりは、チャレンジさせていただく気持ちです」

その上で、購入者の要望があれば、ストロングホールドでの焙煎プロファイルも公開してくれるという。

「たとえば、購入してくれた方がプロファイルをみてみたいという要望があれば、ブログなどで共有してもいいですね。プロファイルを見ただけではあまり想像もできないかもしれませんが、見ながら飲んでみるというのも面白いじゃないですか」

カッピングチャンピオンとしての確かな舌と、ストロングホールドによるチャレンジングな焙煎で生み出された石原さんのコーヒーは、すでにCROWD ROASTERへの「新規参加記念飲み比べセット」として販売中。さらに、ケニア・ティムファクトリーのSL28/SL34のローストイベントも早くも募集中だ。

そして石原さんの次なる挑戦は、焙煎のチャンピオンだ。

「やはりコーヒーに携わるからには、バリスタ業務だけでなく焙煎もしたいという気持ちはシンプルにあります。TRUNK COFFEEというお店は、大会で結果を出して終わりではなく、結果を出した人を押し上げてくれる環境なんです。いずれ自分のお店を持てるように、焙煎技術も磨いていきます」



そんな石原さんの初めてのローストイベントが開催中!
焙煎するコーヒーは、【KKW】ケニア/ティムファクトリー/ウォッシュト。
まずはTRUNKらしい焙煎を行ってくれるとのこと。

気になった方はCROWD ROASTERアプリからぜひ、石原さんのローストイベントに参加してみてください!



SHOP INFORMATION
TRUNK COFFEE LAB 東別院
住所:愛知県名古屋市中区伊勢山1-2-2 恒広ビル 1F
営業時間:9:00〜18:00
定休日:不定休