35歳以下の若手焙煎士の発見・育成を目指す焙煎大会「1ST CRACK COFFEE CHALLENGE」(ファーストクラックコーヒーチャレンジ。略称「1CCC」)の予選カッピングが、2024年7月26日(金)に味の素AGF株式会社にて行われました。
今回、CROWD ROASTERでは半日に及ぶ予選カッピングの様子を取材させていただきました。他では公開されていない、競技用サンプル豆の焙煎プロファイルや、ジャッジの方々の評価、そして最も気になる決勝に進出した6名についてもご紹介したいと思います。
参加者の技量を試すような、豆ポレポレ仲村さんの競技用サンプル豆
2024年大会のジャッジ(審査員)は、STARBUCKS JAPANのロースター/Qグレーダーである木戸田直子(きどたなおこ)さん、JCRC(ジャパンコーヒーロースティングチャンピオンシップ)の2023年チャンピオンを獲得された心斎橋焙煎所のロースターである天満一行(てんまいっこう)さん、そしてJCRCの日本代表トレーナーを務めるRoast Design Coffeeの三神亮(みかみりょう)さんの3名が務めました。
「1CCC」のジャッジ経験は、三神さんは第1回大会から3回連続、木戸田さんは2023年に続き2回目、そして天満さんは今回が初となります。
左から、天満さん、木戸田さん、三神さん
今大会にエントリーしたのは募集枠いっぱいの100名。焙煎技術を競う予選は参加者それぞれに「競技用生豆3kg」と「競技用サンプル豆30g」が与えられ、参加者は「競技用サンプル豆」のカッピングを行い、その焙煎の特徴を捉えて、焙煎プロファイルを考案します。
単に自分が考える「おいしいコーヒー」を焙煎すればいいわけではなく、課題となる豆にいかに近い焙煎ができるかが評価されるため、純粋に焙煎の技術力が求められます。
選出された12名分の焙煎豆
そんな競技用サンプル豆を担当したのは、沖縄・豆ポレポレの仲村良行(なかむらよしゆき)さん。2018年の焙煎世界大会「WCRC(ワールドコーヒーロースティングチャンピオンシップ)」で準優勝、2023年大会でも4位を獲得しています。ちなみに、競技用サンプル豆の提供、焙煎士の選定は、CROWD ROASTERが担当しています。
今回は特別に、CROWD ROASTER メディアにて、仲村さんの焙煎プロファイルを紹介させていただきます。
焙煎を担当した仲村さんのコメントは、以下のとおりです。
「ベイクの定義にある特徴、酸味に抑揚のない感じ。
オーバーの産地特性をミュートする感じ。
この両方を感じ取ることができるかと思います。
カッピングからこの特徴を感じとり、この特徴を焙煎で作り出すことができることを狙いとしました。カッピングスキルと、焙煎の理解の両方がないと作り出せない課題豆にしました!
いかがでしたでしょうか?
悩みましたか?
楽しめましたか?
結果を楽しみにしています。
皆さんが、向き合った時間は、勝っても負けても、財産となったハズです!
僕も含めて皆さんも、まだまだ道半ば。
まだまだ成長して美味しいコーヒーを作りましょう!」
実は、事前にCROWD ROASTERと仲村さんで予選のサンプル焙煎を相談しながら、「今回は焙煎とカッピングの実力を測るような、普段は狙ってすることはない焙煎をあえて課したい」と考えていました。実際にそれが実現できたのも、その焙煎計画を実行した仲村さんの焙煎技術あってこそです。
仲村さんの競技用サンプル豆の印象について、事前に3名のジャッジにもうかがいました。
天満さん
「仲村さんのサンプル焙煎はつかみどころがないのとは真逆、つかみどころがしっかりある印象の豆でした。仲村さんの思惑通り、カッピングスキルと焙煎技術をきちんと理解していないと、この豆にするためにはどんな焙煎のプロセスを踏まないとたどり着けないか、理解していないと焼けない豆だと思います」
三神さん
「個性を強く出すというよりは、均質化された味ですね。焙煎プロファイルを見てみても、多分いまどきの感覚の人だと『こういう焼き方はやりたくない』というような方向性で、そこにあえて踏み込めるかどうかという勇気を試しているような、ちょっと挑戦的な焙煎のしかたです」
木戸田さん
「産地特性がわかりやすいコーヒーでした。ポジティブとネガティブが両方ともはっきりわかって、どんなふうに焼いたのだろう? と思いながら飲むのがロースターとしては楽しかったですし、試されている感じがしました」
言ってみれば、仲村さんから若い焙煎士への挑戦状であり、叱咤激励とも言えるかもしれません。
ガスクロマトグラフィーによるアロマ分析の精度
提出された豆は、味の素AGF株式会社のガスクロマトグラフィーにて分析され、仲村さんの競技用サンプル豆のスコアに最も近い12名があらかじめ選出されました。
そして、この日最終的に12名の豆を実際にカッピングして、決勝に進出する6名まで絞り込む作業が行われました。熟練の焙煎技術とカッピングスキルを持つジャッジによる厳正な評価により、9月に行われる決勝大会に臨めるかどうかが決まります。
12名のカップ。番号や参加者名も最後まで伏せたままで行われた
評価方法は一般的なカッピングと同様で、仲村さんの競技用サンプル豆と12名のコーヒーを、条件をそろえてそれぞれ2カップずつ抽出。ジャッジは5つの項目(Flavor・Aftertaste・Acidity・Body・Sweetness)に沿って評価していきました。
評価項目は他の焙煎競技会でも使われている項目を用いた「1CCC」独自のシートを使用
12名の焙煎の評価
1時間に及ぶカッピングで、それぞれに何度も確認しながらスコアシートを埋めていきます。ジャッジの皆さんも何度も迷ったり、時間を置いて冷えてから再度確認するなど、じっくり時間をかけて評価していきました。
すべての評価を終えて集計を待つ間に、今大会の全体的なカッピングの印象も聞いてみました。
天満さん
「全体的に似たようなコーヒーがしっかり集まっているという印象でした。多少のブレというか、個々の違いもありましたが、しっかり分析されて残った12カップという印象。アロマ分析の結果を飲むのは初めてでしたが、意外性はそれほどなかったですね」
木戸田さん
「仲村さんのカップには特徴的なディフェクト(焙煎で起こるネガティブな味)とポジティブな味が両方はっきり出ていたので、仲村さんが引き出しているいろいろなポイントのうち、参加者がどこを狙っているのか、ということはわかりやすくはあったかなと思います。
ただし、そのディフェクトを故意に狙って再現できるかというのはまた別の話。そういう意味では、今回はカッピング能力のある参加者が多かったと感じました」
三神さん
「3大会すべて見てきていますが、今年のサンプル焙煎が一番深い焙煎でした。ガスクロマトグラフィーではガスしかわかりませんが、実際には質感成分とか酸の強さでも差が出てきます。“そのコーヒーらしさ”というのはいろいろ言えると思うのです。
予選でカッピングした12名の焙煎豆は、(サンプル豆に対して)酸が近いものもあれば質感が近いものもありました。“どういう近さ”なのかは焙煎士ひとりひとりの個性ですが、そんな中でサンプル豆に近い焙煎をするというのは面白い取り組みです。
それと、みなさん焙煎機も違うわけですが、仲村さんの意図した通りの味を作るためには、ひとつだけではなく異なるアプローチでも近しいものはできるはず。なので、そういった各自の工夫も活かせる大会なのではないかと思います」
最終的に、ガスクロマトグラフィーで選出された12名、そしてジャッジの評価により最もスコアが高かった決勝進出6名が、「インスタライブ」で発表されました。
決勝進出者は、即日「1CCC」のインスタライブにて発表
「1CCC」ではアロマ分析の結果が後日参加者それぞれにフィードバックされるため、決勝に進めなかった参加者も、自分の焙煎のどこが足りなかったのかを振り返る機会にもなります。予選への参加自体が、若い焙煎士にとって成長するためのきっかけにできるというところも、「1CCC」という大会の特徴と言えるでしょう。
予選結果(★が決勝進出者)
13 永治龍樹(伊仙町役場経済課)
21 高見徳宏(TAKAMURA COFFEE ROASTERS)
22★ 黒田由和(Ariowl Coffee)
26★ 細井洸希(Specialty Coffee 蒼)
29 時松小百合(タカムラ株式会社)
34 小林純也(SOBA COFFEE ROASTER)
36★ 照屋由李佳(個人)
42★ 西川嘉一(セントーンコーヒー)
43 青木陸(農大COFFEENOKI)
53★ 池田大輝(ゲシャリーコーヒー日比谷店)
70 福井春渡(Cafe kopi kan)
77★ 立野慶太(THE ROASTERS)
総評・ジャッジが感じた「1CCC」の面白さ
最後に、カッピングを終えた3名に、今大会全体の総評もうかがいました。
三神さん
「第1回大会では一次審査からすべての豆をカッピングしましたが、香りの成分はやはりコーヒーの中で一番大きい要素なので、その分析を機械で行うというのは面白い試みですね。(カッピングによる評価だと)その方の力量とか感性が出ると思うのですが、機械はあくまで機械。エントリーの大会としては公平だったのではないでしょうか」
木戸田さん
「競技会ではないところでは、いいコーヒーを目指すことが基準になるじゃないですか。でも、日常の業務とはまた違う視点で、自分が成長できる機会、チャレンジできる大会としてはとても有意義でいい大会だなと思います。日々のカッピング能力と倍煎の能力の両方、さらに自分の焙煎機をどれくらい理解しているかといった、いくつかの要素が合わさっている大会は、なかなか他にはないと思います」
天満さん
「(1CCCは)決勝でブリューイングのプレゼンテーションもあるのが、他の大会ではあまりないことです。また、アロマ分析を導入していることなど、かなり差別化されていると思います。自分が知る競技会の中で最も参加人数が多いですし、たくさんの方が応募できるというのは、大会としても参加者としてもすごく光栄なこと。残った12名の方も十分すごいと思います」
焙煎士No.1を決める決勝大会は9月13日開催! 半額クーポンも!
そしていよいよ、2024年9月13日(金)に「1CCC」の決勝ステージが執り行われます。決勝では焙煎は行われず、制限時間内(20分)にテーマに沿ったプレゼンテーションとウェルカムドリンクの作成となります。
一般の方でも観戦可能(有料チケット2000円。1ドリンク付)なほか、競技終了後にはDJや決勝進出者が考えたコーヒー、さらにアルコールやドリンク、軽食なども用意した「Barista & Roaster Party」も行われます。
競技会の枠を超えて、純粋にコーヒー好きが集い、交流できる場にもなりそうな「1CCC」決勝ステージ。新たなチャンスをつかむ若手焙煎士の誕生の瞬間を、ぜひ現地で一緒に楽しみましょう。
なお、CROWD ROASTER LOUNGE読者限定で、決勝のチケットが半額になるクーポンを、先着20名まで提供中です。以下のチケット購入サイトで割引コードを入力いただくと、通常は2000円のチケット(ワンドリンクや競技者のコーヒー込み)が、半額の1000円で購入できますので、ぜひご利用ください!
割引コード【crowdroaster1CCC】
2024 1CCC 決勝ステージ概要
日程:2024年9月13日(金)13:00〜21:00
会場:東京カルチャーカルチャー(渋谷区渋谷1丁目23-16 cocoti SHIBUYA 4F)
料金:2000円(2024競技会観覧チケット [ワンドリンク込み])
スケジュール:
13:00 開場
14:00 競技スタート
18:00 バリスタ&ロースター Party
20:00 結果発表/表彰
21:00 閉会
※決勝競技会のスケジュールは若干の変更の可能性あり
「1CCC」チケット購入サイト(Peatix)