STORY

地方都市ならではのチャレンジ、PCRCチャンピオンが語る、コーヒーへの情熱


小田原駅から徒歩15分ほどに位置する、自家焙煎珈琲店 カフェクラウディアのオーナー兼焙煎士である中澤怜さんは、2024年の「パナマ・コーヒー・ロースティング・コンペティション(PCRC)」ゲイシャ部門で優勝を果たしました。小田原という地方都市で、CROWD ROASTERのパナマ ゲイシャコーヒーを提供する中澤さんに、コーヒーへの思いや向き合い方、現在の取り組みをお話しいただきました。

学びへの飽くなき探求

「やっぱり外に出ないと発見はないし、成長もない」と語る中澤さん。11年にわたるコーヒー経験の中で、大きな転機となったのは国際的なコーヒー鑑定士資格であるQグレーダーの取得だったといいます。

「最初は中深煎りや深煎りが多い、クラシックなコーヒー屋でした。でも、なにかモヤモヤしていて、もっと勉強したいという気持ちがありました。お店を経営しているとなかなか学ぶ機会がないんです」

自身のスキルを向上させるために、国際コーヒー鑑定士資格Qグレーダーに挑戦。焙煎やカッピングの技術をさらに磨き、コーヒーの味をより客観的に評価できるようになったといいます。

「Qグレーダーを取得してからは、作り手へのリスペクトも高まりました。“焙煎チャンピオン”にはなりましたが、焙煎はあくまでも豆ありきです」

さらには、コーヒー業界ではまだ珍しいロブスタ種のQグレーダーも取得しました。

「Qグレーダーの勉強をしながらやりがいを感じていて、人から薦められたこともあり、アラビカ種を取った後にロブスタ種も受けようと思ったんです。ロブスタもこの先おもしろいコーヒーがたくさん出てくるかもしれない。コーヒーの未来を考えると大きな可能性を秘めていますよね」

技術と知識の融合がもたらした成果

現在も、コーヒースキルズプログラム(CSP)でローストとセンサリーを学ぶなど、学びを継続。「自分一人で自己流でできる天才もいるかもしれませんが、僕はそうではない」と謙虚に語る中澤さん。その真摯な姿勢が、PCRCでの優勝という結果につながりました。

「CSPでは、センサリーといって、主にカッピングや知覚、コーヒーの表現などに特化したコースがレベル3ぐらいまであるんですが、そこに到達するまでにローストも学ばないといけない。つまり、全部つながってるんですよね。焙煎技術や理論があっても、カッピングスキルがないと意味がない。PCRCで勝てたのは、センサリー、カッピングとローストの検証ができたからだと思います。今回はこうなったから、少しこうしよう……と検証を繰り返して最終的に出す。このような部分は強みになったと思います」



小田原から発信するパナマ ゲイシャ

これまでも、パナマ ゲイシャの提供は行っていましたが、PCRCで優勝したのをきっかけに、その競技会でも使用された、「フルトゥンゴ農園」の提供を始めました。フローラルでフルーティーな香りが際立つこのゲイシャは、CROWD ROASTERで取り扱っていたものです(現在は完売)。


小田原という土地でスペシャルティコーヒーを広めることには難しさもありますが、中澤さんは「価値を伝えることができれば、お客様はついてきてくれる」と確信しています。

「小田原で1杯数千円のコーヒーを出すのは挑戦です。でも、結局はその価値を伝えられるかどうかだと思ってます。Qグレーダーの取得やPCRCなどの大会に出場することも説得力を上げることにつながっています。商品に対しての説得力を上げて、自分も商品も安売りしないように心がけています」

また、コーヒーの透明性とストーリーを重視。「スペシャルティコーヒーって生産履歴や素性が明らかであることが大事ですよね。そういったストーリーをお客様に伝えることがスペシャルティコーヒーの本質。だからこそ、コーヒーの情報を細かく記載したカードを用意し、しっかりと説明できるようにしています。これはある意味義務だと思っています」

PCRCチャンピオンとしての新たな挑戦として、より多くの人に楽しんでもらうためにパナマ ゲイシャに特化したオンラインショップの開設も計画中だという中澤さん。「せっかくチャンピオンになれたので、このチャンスを活かしたい。小田原でもスペシャルティコーヒーやパナマ ゲイシャの素晴らしさを伝えていきたいです」

地域に根ざしながら、挑戦を続ける

接客スタイルも独特なものに。初めての来店客には、あえてブレンドコーヒーではなく、シングルオリジンをすすめることもあるといいます。

「よくわからないからブレンドでいいです、という注文も多いんです。でも、せっかく来店いただいたお客様には、スペシャルティコーヒーの多様な魅力を知っていただきたい。お客様の好みを丁寧にヒアリングして、最適なコーヒーを提案しています。小田原でもスペシャルティコーヒーを求めて来てくれるお客さんが年々増えてます。せっかくなので、少し“背伸びして”売っていければと思ってますね」

スペシャルティコーヒーをよく知る方には、飲み比べセットが人気です。
同じ銘柄の抽出方法違いでの飲み比べや、同じ生産国の銘柄飲み比べなど、多様なセットメニューが準備されています。
エチオピアは銘柄5種飲み比べというメニューも。コーヒーファンに向けたメニューの幅はどんどん広がっているようです。

一方で、「街ののんびりしたコーヒー屋のままでいたい」という思いも。「あまり意識高い系になるつもりはありませんが、せっかくだから」と語る言葉には、地域に寄り添いながら、コーヒーの新しい可能性を追求していく姿勢が表れています。中澤さんの挑戦は、これからも続いていきます。


自家焙煎珈琲店 カフェクラウディア
神奈川県小田原市中町1-15-1 ホワイトシャトル102
営業時間:9:00~21:00(LO20:00)
定休日:毎週月曜日、第3火曜日