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Takeruの焙煎士飲み比べレビュー【GSA】エルサルバドル ゲイシャ

CROWD ROASTERをローンチ初期から利用しているユーザーで、長くコーヒー関係の仕事をしていた「Takeru」のレビュー企画。
今回は「【GSA】エルサルバドル エル・カルメン農園 ゲイシャ アナエロビックナチュラル」を、豆ポレポレ 仲村良行さんと、TAKAMURA COFFEE ROASTERS 岩崎裕也さんのお二人の焙煎で、飲み比べたレビューです。

シナモンローストのゲイシャを飲み比べ

 
今回、焙煎士飲み比べで使用する生豆は「【GSA】エルサルバドル エル・カルメン農園 ゲイシャ アナエロビックナチュラル」。
珍しいエルサルバドルのゲイシャ種で、加えてまだエルサルバドルでは珍しいアナエロビック(嫌気性発酵)を使用した生産プロセスのコーヒーです。

こちらのエル・カルメン農園は、エルサルバドルの中でもコーヒー生産が盛んなアパネカ・イラマテペック山脈という、3つの県にまたがる山脈エリアに位置しています。
その中でもエルサルバドルの最西部、グアテマラとの国境付近にあるアワチャパン県という地域のアタコという自治体付近に位置する農園のようです。

標高が1,250m〜1,400mと、他品種よりも多湿で低温を好むと言われているゲイシャ種を育てる上ではそこまで高くはないエリアですが、森林や生態系を保護しながらシェードツリーの下の日陰で直射日光を遮って栽培されるため、ゆっくりと均一に実が熟していくようです。

2年近くCROWD ROASTERを利用している私ですが、こちらの銘柄を頂くのは初めて。
まずは豆面を見てみましょう。
 
仲村良行さん焙煎(左)、岩崎裕也さん焙煎(右)

今回はどちらもシナモンローストで仕上げたとのことですが、同じ焙煎度と言えど色味や豆の膨らみ、皺の伸び、艶など、やはり焙煎士ごとに結構違いがありますね。これが味わいにどう影響するのか、飲むのが楽しみです。

それと一点気になったのが、この銘柄はあまりゲイシャ種らしい縦長な形状の豆が多くはないですね。ブルボンのようにコロンとしながらも少しセンターカットからもっちりと膨らんでいるような豆を多く見受けられます。

私個人の今までの傾向として、あまり縦長の形状ではないゲイシャ種(と呼ばれて流通しているもの)はフローラルな香りが少ないと感じておりましたので、今回もそのような味わいなのでしょうか(そもそもアナエロビックナチュラルなので華やかさは少ないと思いますが)。
それでは抽出していきたいと思います。

ペーパードリップでさっそく抽出

 
抽出方法はペーパードリップ。Melittaのドリッパーを使用して粗く挽いたコーヒー豆14gに対して140mlのコーヒーを抽出します。焙煎度合いが浅めの豆なので、重厚感のあるボディというよりはすっきりと優しい口当たりで香りを愉しめるコーヒーを目指します。

テイスティングも香りを愉しめるよう、今回はワイングラスで頂きます。

岩崎裕也さん焙煎のコーヒーの印象


非常に優しく滑らかなアタック。
ラム酒のような蒸留酒の印象を強く感じられ、香りが鼻から抜けていきます。
口の中で少しずつ変化し、巣蜜のような甘い印象やプラム、仄かにナツメグのようなスパイスの香りも感じられます。

アナエロビックと聞いて苦手と思われる方もいらっしゃるかと思いますが、こちらはよく敬遠されるような強い発酵の香りは感じられません。
(淹れ方によっても印象は変わるかと思いますが)

程よくお酒のような芳香な香りが口の中に広がり鼻から抜け、余韻に香りを長く愉しむことができます。
正直言ってかなり好みです。

ゲイシャ種らしいフローラルさは想像通りやはり感じられませんね。
ただ他の栽培種で同じようにアナエロビックナチュラルをしていたらこのような綺麗な味わいにはならなかったと、そう思わせるようなクリーンさとバランスの良さを感じます。

とにかく余韻が長いです。
ただべったりと重く残るわけではなく、少しずつ少しずつ、優しく消えていくのが非常に心地良いです。
とても綺麗な味わいで香りが複雑、そして香りの余韻が長い。
もう一度言います、これかなり好みです。

仲村良行さん焙煎の印象



続いて、豆ポレポレ 仲村さん焙煎のGSAを頂きます。
オランジェットのような甘さと、しっかりとしたボディ......。

目論見が外れました。
香りが愉しめるすっきりと優しい口当たりのコーヒーを目指しての抽出だったので、この焙煎豆に対しては抽出方法もテイスティング方法も合っていないですね。

もう少しこの豆を活かせる抽出、テイスティング方法があると思いますので淹れなおしたいと思います。

純粋な飲み比べにはなりませんが「同条件で評価をする」ことが目的ではなく、焙煎士それぞれが仕上げた豆を「最大限愉しむ」ことが目的ですので、もっと美味しくなるよう早速淹れなおしたいと思います。
 
 
仲村さん焙煎の豆の良さを最大限引き出せるよう、厚みのあるボディと滑らかなマウスフィール、しっかりとした甘みを意識してLiLi Driper Classicを使用し、粗く挽いたコーヒー豆18gに対して150mlのコーヒーを抽出します。

テイスティングも滑らかなマウスフィールを愉しめるようにやや口が厚めのカップで。



うん、やはりこっちでした。
厚みがありとろっとした滑らかなマウスフィールと、芳しいカカオや赤ワインのような香り。
清見のような優しい酸味がコーヒーに爽やかさを与えてくれます。

そしてこちらもまた余韻が良い。
粗めに挽かれたカカオで作られたダークチョコレートのような強いカカオの香りとアフターテイスト。
鼻に抜ける香りの量感が多く、また穏やかなトーンのコーヒーなので心身共にとてもリラックスさせてくれます。
ザクザクとした食感のチョコレートが連想されるアフターテイストも面白いです。

冷めるにつれて赤ワインの印象が強くなってきますね。
また、アーモンドのような香りや少し鰹出汁のような印象も出てきました。

常温にまで冷めると紹興酒のような印象にも感じられます。
とろっと蜜のような甘さが余韻まで長く感じられ、とても心地良いです。

アナエロビックらしいと言うんでしょうか、発酵の印象は先ほどの岩崎さん焙煎のコーヒーだとラム酒のようでしたが、こちらは赤ワインのように感じられ、どちらもお酒のような印象に繋がっていますね。

強い発酵の香りが苦手な私ですが、今回はどちらの焙煎も美味しく頂くことができました。
同じように強い発酵の香りが苦手で、お酒のような香りのコーヒーは好きという方にはお勧めできる銘柄です。

ゲイシャ種らしいフローラルさはやはりこちらも感じられませんでした。
この「GSA」という銘柄はそういう味わいの銘柄なのでしょう。

ただ、ゲイシャ種ということは関係なく、ただただ抜群に美味しいコーヒーをどちらも愉しむことができました。

飲み比べを終えて


同じシナモンローストという焙煎度合いで仕上げたコーヒーでも、やはり味わいが大きく異なってきましたね。

岩崎さん焙煎は、明るいトーンで軽やかながら蒸留酒の香りを中心とした複雑な香りを楽しめるコーヒー。
仲村さん焙煎は、穏やかなトーンで厚く滑らかなマウスフィールとカカオや赤ワインの香りを中心として複雑に味わいが変化していくコーヒー。
共通しているのはお酒のような香りや複雑味があるということとアフターフレーバーが長いこと。

このような違いを楽しめるのもCROWD ROASTERの特徴だと思っています。
同じ農園、同じロットの生豆を同じ輸送・保管をして別々の焙煎士が各々の表現したい味わいに仕上げる。
 
それはつまりその優れた品質の生豆の可能性をより知ることができることに繋がります。
自ら焙煎をする人でないと中々知ることのできない世界を体験できるのが非常にニッチで奥深いサービスですね。

今回は別々のタイミングで立ち上がったローストイベントのコーヒーなのでエイジング期間も異なっています。
この先のエイジングによっても印象はまた変わるでしょうし、当然ですが淹れ方によっても味わいは変わってきます。

今回のレビューも上記のような味わいを必ず楽しめるということを保証したレビューではありませんが、皆さんのコーヒーライフに少しでも参考になれば幸いです。

それでは、今回はこの辺で。
皆さんの生活に良いコーヒーがあらんことを。
Takeru
 

今回のレビューに焙煎士の方からコメントをいただきました

岩崎 裕也さん

こんなに素晴らしいコメント頂いて、私がお伝えすること何も残っていないような(笑)
焙煎において意識していることをお伝えすると「私らしさ」ということでしょうか。
焙煎のプロダクションカッピングは毎週繰り返しますが、一緒に飲んでいるスタッフが言うには「岩崎さんの焙煎」だそうです。

たまーに肩をぐるんぐるん回して朝一バリスタに「エスプレッソ1種調整させて!」お願いして、調整したエスプレッソも、「岩崎さんの味」だそう。

クラウドロースターのローストイベントで焙煎する初めてのコーヒーも、焼いた後のカッピングでスタッフから出る言葉は「岩崎さんっぽい味」だそう。

どうやら「私の味(焙煎)」があるそうで、実はそれこそ私の目指すところの一つでもあります。

過去の取材で焙煎について下記のようにお話したことがあります。
「タカムラの味や、空気感が伝わるようなコーヒーを焼きたい。素材本来の味は大切にしつつも、飲んだだけでぱっ、と焼いた人の顔やタカムラで過ごす時間が浮かんでくるような、タカムラのコーヒー、と分かるようなものを焼きたいんです」

今回私が焙煎した【GSA】エルサルバドル エル・カルメン農園 ゲイシャ アナエロビックナチュラルで頂いた下記の言葉は、的を射た私の焙煎の特徴かもしれません。

「とにかく余韻が長いです。ただべったりと重く残るわけではなく、少しずつ少しずつ、優しく消えていくのが非常に心地良いです。とても綺麗な味わいで香りが複雑、そして香りの余韻が長い。」

嬉しいですね。
とにかく美味しさの(良くなる)ためなら、私は何しても良いと思っています。
「手抜いた方が美味しくなるなら手抜きます笑」

また、今回の飲み比べのように自由に楽しむの最高ですよね。
私も記事楽しませて頂きました!