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スペシャルティコーヒーとブレンド

スペシャルティコーヒーの最初の定義としては、産地のマイクロクライメット(微小気候)を表現した、つまり産地の農園の気候や土壌といった「テロワール」が表現されたコーヒーとされ、トレーサビリティの重視、マイクロロット化の推進などがこの流れの中で行われてきました。
 
こうした点からすると、いわゆるシングルオリジンがスペシャルティコーヒーには欠かせないものであり、複数の銘柄をブレンドしたコーヒーはあまり相性がよくないように感じます。

しかし最近では、スペシャルティコーヒーを扱うコーヒーショップやロースタリーが、自らを表現する手段の一つとして、シングルオリジン同士をブレンドしたブレンドコーヒーを作ることも増えてきました。
 

プレミックスとアフターミックス

世界中の産地から入手した個性あるコーヒーを、あるテイストを目指してブレンドすることは、コーヒー店の特権ともいえます。
そんなブレンドコーヒーの作り方には、「プレミックス」と「アフターミックス」という2種類があります。

「プレミックス」とは焙煎する前の生豆状態の時にブレンドしてから焙煎する方法です。
 
ブレンドしてから焙煎をするため、全ての銘柄が同じ焙煎度合いになるため、バランスよく仕上がります。ただし、それぞれの銘柄に最も適した焙煎度ではない焼き方になってしまう可能性もあるため、ポテンシャルを最大限引き出せないこともあります。

「アフターミックス」はそれぞれの銘柄ごとに焙煎をし、焙煎豆の状態のものをブレンドする方法です。
 
それぞれの銘柄に合わせた焙煎度にできるため、個々の個性を最大限引き出すことができ、より複雑な味わいに仕上げることができるのが特徴です。ただし、銘柄ごとに焙煎をするため、手間がかかります。スペシャルティコーヒーなどの品質の高いコーヒー豆は、こちらの方法で焙煎されることが多いかもしれません。

掛け合わせで生まれる新たなフレーバー

かつてブレンドコーヒーといえば、単一銘柄では弱点があるものを補うような銘柄同士でブレンドして、バランスの取れた味わいをつくるという、どちらかといえばマイナスの部分を補うようなイメージがあったと思います。
大量生産されるコーヒーは、今でもそのような方向でブレンドされているでしょう(もちろんそこにはコーヒーの価格のバランスを取るという面も大きい)。

一方で、スペシャルティコーヒー専門店によるブレンドは、それぞれの個性あるフレーバーを生かし、それを掛け合わすことによって、新たなフレーバーを生み出したり、より複雑味のあるコーヒーに仕上げたりすることを目的としています。
 
あまりたくさんの銘柄を混ぜると、それぞれの個性を感じにくくなるため、多くは2種類の銘柄をブレンドしたものとなっています。

こうした新しい方向性のブレンドコーヒーは、単に「1+1」で生み出されるものではなく、掛け合わせることで生まれるフレーバーやアロマ、質感を作り出すものとなっています。
 
シングルオリジンは、生産者や産地の味づくりによりフォーカスしたもの、ブレンドはブレンダーであるコーヒーショップが狙ったものを表現するという点で、そうしたショップやロースタリーの味づくりによりフォーカスしたものと考えることができます。
 
コーヒーがカップに至る長い道のりの中で、シングルオリジンとブレンドは、そのフォーカスされる場所が違うとはいえ、結局のところ必要なのは、品質の高いコーヒー生豆であり、豆のポテンシャルを引き出す焙煎であり、どれも欠かすことはできません。
 

自分でブレンドするという楽しみも

ところでこうしたブレンドコーヒーは、自分で「アフターミックス」をすることでも楽しめます。
 
手元に中途半端に余った単一銘柄のコーヒー同士を混ぜて、淹れてみたという経験はお持ちの方も多いと思います。
その時に、この組み合わせは合わなかった、これはいいフレーバーになったなど、ブレンドならではの感想を持ったのではないでしょうか。

たまには、ブレンドコーヒーでしか生み出すことのできない味わいを感じてみるもの面白いかもしれません。


2023.7.22
CROWD ROASTER