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3年ぶりのラテアート国際大会で、タイのキティピッチ選手が初優勝 【フリーポアー・ラテアート・グランプリ】

ラテアートNo.1バリスタを決める「フリーポアー・ラテアート・グランプリ東京2023」が、2023年4月12日(水)〜14日(金)、東京ビッグサイトで開催された食品展示会「第26回ファベックス2023」にて開催された。
 
日本食糧新聞社の協力を得て、一般社団法人日本ラテアート協会が主催。前回大会は2019年で、その後新型コロナウイルスの影響により開催が休止されていたため、実に3年ぶりの開催となった。
 
 
国内外のバリスタ64名が集い、トーナメント方式で1対1で3分の規定時間内にラテアートを描いていく。カップなどの道具は自分で持ち込み可能だが、ミルなどは大会が準備したものを使用するが、エスプレッソマシンは「フリーポアー・ラテアート・グランプリ大阪2022」の本選でも使われた「La Marzocco Linea PB2」と、「Astoria Plus 4 You TS」というメーカーの異なる2台が用意され、抽選によって選ばれた。
 
Astoria Plus 4 You TS(左)とLa Marzocco Linea PB2(右)のいずれかを使用してラテアートを描く
 
審査員は国内外の著名なバリスタが5つの審査基準に沿って選択し、3名の審査員から2票を獲得したバリスタが上位に進出する。
 
予選は3名の審査員が直接投票。準決勝以降はそれぞれ講評が語られた
 
決勝トーナメントは64名から始まり、12日に64名から32名に、13日に32名から16名に絞られ、14日の最終日は残った16名から、1位、2位、3位が決定。日本ラテアート協会をはじめ、協賛各社から賞金や副賞が授与される。
 

美しさだけではない、技術とテクニックの共演

 
審査項目は、①スピード、②外観の美しさ/バランス/調和・対称性、③色の表現力、④明確生、⑤創造性と難易度の5つ。3分間の中であれば何度でも作り直せるが、その分時間のポイントは失われてしまう。
 
ひとつの作品にかけられる時間も、バリスタの腕やデザインの難易度によって変わる。そのため、スピードが早くても仕上がりが損なわれたり、デザインはよくても時間がかかりすぎて失敗ができないなど、選手それぞれの戦い方と日頃の練習の成果が問われる、レベルの高い大会となった。
 
キティピッチの牛(左)とバラのシマウマのラテアート
 
最終日のベスト16に勝ち残ったのは、韓国5名、日本6名、台湾3名、タイ2名。過去の大会を振り返ると、2014年が日本、2015年〜2016年が台湾、2017〜19年が韓国の各選手が優勝している。今回は主催国の日本から最多人数が勝ち残っており、ぜひともチャンピオンを奪還したいところだ。
 

日本、韓国、台湾、タイが勝ち上がった最終決戦

 
ベスト4までの顔ぶれは日本、韓国、台湾、タイという参加国からひとりずつが勝ち上がるというドラマチックな展開。前回大会の2019年チャンピオンである韓国のRORAを日本の伊藤慎哉が下したり、予選のために参考にしたランキング「Alternative Ultimate Battle 2023(公認)」で上位のバリスタが敗退するなど、波乱の多い大会でもあった。
 
準決勝は、日本の伊藤と韓国のジョンヒョク(JONGHYEOK LEE)。スローリーフ&バラという繊細なモチーフを描いた伊藤に対して、ジョンヒョクは躍動感があり観客の目を楽しませる動物を力強く描き、ジョンヒョクが決勝に駒を進めた。
 
決勝に進んだジョンヒョク選手
 
もう一方の準決勝は、タイのキティピッチ(Kittipich boonsawasd)と台湾のバラ(Bala、Shao-Sing Lin)。バラのシマウマに対してキティピッチは牛と、ともに得意とする動物モチーフだったが、総合的にポイントを獲得したキティピッチが勝ち上がった。
 
 
準決勝まで進んだバラ選手
 
この時点で残念ながら日本勢の優勝はなくなってしまった。3位決定戦では、伊藤、バラともに今大会最後のラテアートということで気合も入り、どちらの作品も素晴らしかったが、審査員の評価は2-1でバラが3位を決めた。
 
4位に食い込んだ伊藤選手
 
そして決勝戦は、タイのキティピッチと韓国のジョンヒョク。予選を上位で勝ち抜けた実力者同士の対決はモチーフもともに動物で、最後の最後で審査員もうなるほどの完成度を見せたものの、今大会を通してその実力を発揮し続けたキティピッチが優勝を果たした。
 
決勝戦を戦うキティピッチ選手
 
実は、会場までの電車を間違えて試合ギリギリの到着となるアクシデントに見舞われたキティピッチ。優勝インタビューでは、「この大会に関わったバリスタ、主催者の方々、すべての人に感謝したい」と、手のひらを合わせて感謝の言葉を伝えた。チャンピオンを獲得して今後の目標について聞かれると、「18日に帰国し、19日にはすぐに店に立つ」と直近の予定のことを話す天然っぷり。来日は初めてとのことで滞在中は「イザカヤに行きたいです」と屈託のない笑顔で観客を魅了した。
 
しかし実は、試合の合間にも会場の隅で水を使って練習するなど、努力の人でもあったキティピッチ。まさに今回勝つべくして勝ったチャンピオンだった。
 
試合前に練習するキティピッチ選手
 
優勝トロフィーを手に喜びをかみしめた
 
キティピッチには、優勝賞金30万円と、協賛企業各社から多数の副賞が贈呈された。CROWD ROASTERからは副賞として、日本の職人技を体現したグロースヴァルト社製の特注したレザーバッグ「フィーグ」と、CROWD ROASTERアプリの保有豆として、エルサルバドル エル・カルメン農園のゲイシャ10kgを進呈した。
 
なお、CROWD ROASTERからは2位、3位の副賞としてそれぞれグロースヴァルト社製の特注したレザーグッズと、CROWD ROASTERアプリの保有豆が贈られた。
 
CROWD ROASTERからは上位3名に、CROWD ROASTERで使用できる豆と特注のレザーグッズを贈呈

アジアへのラテアート文化の広がりを感じた大会

日本ラテアート協会の上野登 代表理事は、「東京開催の大会としては初のタイのチャンピオンが誕生したことは、日本以外のアジア地域にラテアート文化が広がっている証拠だと感じられてなによりうれしいですね。これから日本がアジアトップにカムバックするために、私たちの協会として、力になれればと思っています」と大会を振り返った。
 
今回惜しくも入賞を逃したバリスタたちも、日本全国で、そしてアジア各地で活躍するトップバリスタばかり。大会である以上勝敗はついてしまうが、3日間を通して参加バリスタたちが真剣勝負の中で描いてきたラテアートを眺めるだけで、観客としてラテアートの楽しさ、素晴らしさをあらためて実感できた。
 
予選参加者たちのラテアート
 
最終日、ベスト16のラテアート。同じバリスタでも試合ごとに少しずつ出来栄えが違ったところも大会ならでは
 
3年ぶりの開催ながら大成功に終わった「フリーポアー・ラテアート・グランプリ東京2023」。次の大会でも、またあっと驚くような斬新で新しい、もしくは圧倒的な技量による美しさで、私たちコーヒーファンを楽しませてほしい。