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水によるコーヒーの味わいの違い(1) 軟水・硬水編

皆さんはコーヒーを抽出するときに、水の違いを気にしていますでしょうか?
私もバリスタとして、いろいろなお店で抽出をするようになってから水の違いを気にするようになりました。
 
実際に淹れていると同じ銘柄でもお店の場所が違うことで味わいが違うということを痛感しました。(お店によって水質が違うのか...)

近年、WBrCなどの抽出の大会では、カスタムウォーターを自分で作り、出場する選手が増えてきており、水のミネラルの配合を変えて使用することが一般的になりました。
このことにより、コーヒーを抽出する際の「水の違い」が注目されるようになってきました。

この企画では水による味わいの違いについて考えていきたいと思います。
第1弾は「軟水と硬水」の違いについて見ていきます。
 

水の種類によって味が変わる

そもそも、なぜ水によってコーヒーの味が変わるのでしょうか。
そこには、「硬度」と「pH」という2つの要素が関連しています。

硬度とは、水分中にどれだけのミネラルが含まれているのか、示すための指標のことです。
一般的には、炭酸カルシウムの含有量が、60mg/L以下の水を軟水、60~120mg/Lの水を中硬水、120~180mg/Lの水を硬水、180mg/L以上の水を超硬水と呼んでいます。

実はコーヒーには、ミネラルと反応しやすい性質があるため、ミネラル豊富な硬度の高い水を使うと、コーヒーとの反応が進み、味わいが変化しやすい傾向にあります。また、質感も変わってくるため、味わいに様々な影響を与えています。

一方、pHとは、水の水素イオン指数を示しています。
「水=中性(pH7)」をイメージする方も多いかもしれませんが、水にはさまざまな物質が溶け込んでいて、同じ水でも様々なpHの値の水があります。
コーヒー豆は、酸性の性質を持つ物質であるため、水のpHによって味わいに変化があると言われています。

爽やかな味わいは「軟水」、しっかりめの味わいは「硬水」

では、実際に軟水と硬水とでは味わいにどのような違いが出るのでしょうか。

軟水の場合は、ミネラルの含有量が少なく、ミネラルによる化学反応がほとんど起こらないため、コーヒー豆が本来持っているそのものの味わいを楽しみやすい傾向にあります。

口当たりがまろやかで、すっきりした雰囲気に仕上がりやすくなります。

一方、硬水の場合はミネラル分が多いため、ミネラルとコーヒーの反応が進み、様々な成分を抽出しやすい傾向にあるため、しっかりとした味わいになりやすいです。

おすすめは中性のお水

pHは0~14の数値で表され、数値の高低で「酸性」「中性」「アルカリ性」に分類されています。
 
酸性:pH < 3.0
弱酸性:3.0 ≦ pH < 6.0
中性:6.0 ≦ pH ≦ 8.0
弱アルカリ性:8.0 < pH ≦ 11.0
アルカリ性 :11.0 < pH

コーヒーの焙煎豆は、中煎りで5.0前後、深煎りで5.6前後の弱酸性といわれています。
そのため酸性の水を使うと酸味がより引き立ち、コーヒーの酸味が強く出る傾向にあります。

反対に、アルカリ性の高い水を使うと酸味が出にくくなりますが、同時にコーヒーが本来持っているフルーツ由来の酸味も打ち消されてしまうため、味わいのバランスが崩れやすいといわれています。アルカリ性の水もおいしいですが、強いアルカリ性の水はコーヒーに向いていません。

その銘柄が持ってるポテンシャルをバランスがよく引き出すには、中性の水がおすすめです。
 
 
コーヒー豆が持っているポテンシャルや、抽出器具、抽出環境等、コーヒーの味わいは様々な要因が絡み、味わいが決まるため、一概に軟水だからといってすっきりした味わいになるとは言い切れませんが、少なからずそのような影響があります。

今後は、実際に様々な水を使った抽出レビューや、カスタムウォーター等、水による味わいの違いを深掘りしていきたいと思います。
 

2023.05.08
Hiroto Usukura