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アラビカコーヒー発祥の地!エチオピア原種の秘密

エチオピアの名産地であるシダマ
 
コーヒー発祥の地とされるのが、アフリカ大陸のエチオピア西南部です。
ここでいうコーヒーとは、アラビカ種のコーヒーノキのことです。

125種あるコーヒーノキの自生地は、アフリカ、マダガスカル、オセアニアに分布しており、そもそもは中央アフリカが発祥とされます。

そのうちの1種であり、古くから現在までコーヒーとして利用されてきたアラビカ種の原産地とされるのが、エチオピア西南部なのです。

ちなみに、コーヒーとして飲用されるもう1種のカネフォーラ種(ロブスタ)は中央アフリカの原産です。

現在のところ、遺伝子研究からアラビカ種は、このカネフォーラ種とユーゲニオイデス種という種の祖先同士の交配によって生まれたと考えられています。

コンゴ民主共和国とウガンダの国境地帯にあるアルバート湖周辺は、両種の生息域が近接する場所で、ここで生まれたのちに、アラビカ種(の祖先)はエチオピア西南部に広がり、その森の中で氷河期を生き抜いたという説が唱えられています(旦部幸博『コーヒーの科学』参照)。

コーヒーの利用の始まり

このアラビカ種のコーヒーを、人類がどのように利用し始めたのかはその出会いも含め、はっきりしません。

よく目にするコーヒー発見伝説として、山羊飼いカルディのエピソードがありますが、もちろん伝承であり、1600年代の書物には、エチオピアではなく中東のどこかの話とされ、「カルディ」の名も記されていないとのこと。

伝承は置いておいて、実際にコーヒーを利用し始めたのは、エチオピア西南部に数多く存在する少数部族たちです。

この地には、さまざまな利用法が今に伝わっており、葉や豆を飲んだり、薬にしたり、果実を食べたりと部族ごとに違った利用法があるといいます。また儀礼に用いられることも多いようです。

カフェインの覚醒効果が、こうしたさまざまな利用法に関わっていると考えられています。

ちなみに、エチオピアならではのコーヒーの楽しみ方として知られる「コーヒーセレモニー」。日本の茶道のように部屋を整えて来客にコーヒーを振る舞うものですが、これは古くから行われているものではなく、比較的近年になって行われるようになったものと考えられています。
 
エチオピアで行われる「コーヒーセレモニー」。アラブ地域のコーヒー器具の影響が大きい

エチオピアからイエメンへ

エチオピア南西部で利用されていたコーヒーが、他の場所に広がる転機となったのが、紅海を隔てたアラビア半島のイエメンに伝わったことだとされます。

このイエメンの地で、15世紀にはコーヒーは飲用として利用されるようになり、やがて人の手で栽培されるようになります。

長い時間をかけて発展したアラブ世界でのコーヒーの飲用習慣は、やがて17世紀にヨーロッパへと伝わり、コーヒーは西欧で飲まれると同時に栽培も各地で行われるようになります。

そんな中でも、イエメンのモカ港から出荷される、イエメンとエチオピアのコーヒーは、最高級銘柄としてその地位を長く保ち続けました。

エチオピアのコーヒーをモカ(エチオピア モカ)と呼ぶのは、エチオピア産のコーヒーが長くイエメンのモカ港から出荷されていたためです。
モカ港が使用できなくなったのちも、この地域から出荷されるコーヒーはモカと呼ばれ続けました。

多様性が生まれたエチオピアのコーヒー

シダマ地域でのコーヒーチェリーの乾燥
 
こうした長いコーヒーとの関わりの歴史を誇るエチオピア。
そのエチオピアが現在コーヒーの産地として注目されるのは、品質の高いコーヒーを多く生産することだけではありません。

これまで述べたような歴史的経緯によって、アラビカ種の中でも多種多様な遺伝的特徴を持った品種が数多く存在しているからです。

系統立てされた栽培品種というものではなく、多様な特性を持ったアラビカ種のコーヒーノキが栽培されていたり、自生もしくは半自生の状態で存在しています。

これらはまとめて「エチオピア原種」や「エアールーム(Heirroom)」と呼ばれています。一説には1万種以上あるなどともいわれますが、遺伝的多様性に富んでいる集団であり、品種分けをする意味はほとんどありません。

こうした独自の歴史的な背景から生まれる、エチオピアのコーヒーは、そのフローラルで紅茶のような独特な風味で多くの人々に愛されているのみならず、また未知の部分を大きく残した可能性を秘めたコーヒーということができるのです。
 
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