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コーヒーの濃度や抽出効率を表す「TDS」と「EY」

 
焙煎度の数値的な指標について、以前の記事で解説しましたが、抽出時にも参照される数値があります。
特に知られているのが、濃度=TDSと収率=EYです。

今回の記事ではこのふたつの数値を解説します。

濃度を表す指標「TDS」

 
まずは液体の濃さを表す「TDS」です。これは、Total Dissolved Solidの略で、日本語では「総溶解固形分」という意味です。
抽出されたコーヒーの液体にどれだけコーヒーの成分が含まれているかを示す値で、パーセントで表します(ほかの表現方法もありますが、コーヒーではパーセントで表すことがほとんど)。

この数値を計測するには、濃度計が必要となります。ATAGO社やVST社からコーヒー濃度計が販売されているので、これを使って計測することになります。
ただし、濃度計も個体差や液温によって数値にばらつきが出るので、目安として考えた方がいいといわれます。

TDSは濃度というだけあって、数値が高ければテイストが強くなり、質感が重くなります。
一方、低ければテイストや質感が弱くなり、低すぎると水っぽくなります。
クラシックなエスプレッソでは、8〜12%、ドリップコーヒーでは1%台前半となるとされるので、この数字を考えてみれば、濃度の濃い/薄いのイメージが湧きやすいのではないでしょうか。

収率は抽出効率を示す数字

 
次は収率、「EY」です。EYとは、Extraction Yieldの略で、これはコーヒーの粉からどれくらい成分が水に溶け込んだかの割合を示します。
成分の移動の割合をパーセントで表したもので、前述のTDSがわかれば計算することができます。

計算式は次のようになります。
 
EY(%)= 抽出されたコーヒーの液量(g)× TDS(%)÷ 使用したコーヒーの粉(g)
 
例えば、12gのコーヒーを140ccのお湯で抽出し、出来上がりが120ccで、計測TDSが1.5%だった場合、15%と算出されます。これがEYの値となります。

では、このEYはどんな指標として用いられているのかというと、過抽出か未抽出かを判断する目安として利用されています。
数値が高くなれば、抽出効率が上がり、成分が多くなりテイストも複雑になります。
高すぎると苦味や雑味が主体になり、「過抽出」となります。

一方、数値が低ければ、甘さが減って酸味が強くなり、酸味が主体となれば「未抽出」となります。

ただし、どこからが過抽出/未抽出であるという基準は存在しません。
SCA(スペシャルティコーヒーアソシエーション)では、EY値は18〜22%が「適正抽出」であり、これ以下だと抽出不足、これ以上だと抽出過多であるという目安を出していますが、必ずこの範囲に入るコーヒーでなければ、適正な抽出ではないということはありません。

このテイストの違いですが、大まかにいって、コーヒーの成分が次のような順で水に溶け出していくことが知られており、その傾向からいわれるものです。
 
酸味成分→甘味成分→苦味成分
 
つまり「未抽出」であれば、酸味成分は水に移動したものの、甘味成分、苦味成分はまだ抽出されていない状態、「過抽出」であれば、酸味成分、甘味成分、苦味成分が出ているものの、苦味成分が主体となっている状態といえます。

それぞれの数値の利用

 
ふたつの数値のうち、「TDS」はテイストの強弱や質感の強弱を表すことができますが、単体で利用されることはほとんどないと思います。
実際には「EY」の値を出すために使われることが多く、この「EY」では、過抽出・未抽出の判断と、テイストのバランスを表現することができます。

このEY値も、一概に適正な数値というものはないので、ふたつの異なるコーヒーを比較するといった利用方法が中心となります。
淹れ方による違いや、さまざまな条件の違いによる差を検証するためには、こうした客観的な数値が大きく役立つものとなります。

ただし、数値だけでは表現できることに限りはありますので、カッピングなどによる官能評価もあわせて行うことが必要となるでしょう。

ここまで、TDSとEYの値について、解説してきました。
温度、抽出時間、粒度、抽出方法や手順によって数値は変化しますので、こうした変化の要素についても今後、解説していきたいと思います。
 
 
2023.10.10
CROWD ROASTER