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コーヒー焙煎士の仕事とは?コーヒー生豆から美味しさを引き出すプロ【初心者でもわかる】


コーヒーを飲む際、皆さんはその香りや味わいを楽しんでいるでしょう。しかし、その美味しさを生み出すために欠かせない存在がいることをご存知ですか?それが「焙煎士」です。この記事では、コーヒーの焙煎が何のために行われるのか、そして焙煎士の仕事内容や役割について詳しく解説します。

コーヒーの焙煎は何のために行う?


コーヒーの生豆は、収穫後に選別・精製されて出荷されます。しかし、この状態の豆は硬く、水分を多く含んでいます。また、コーヒーの風味を感じるとはまったくできません。つまり生豆のままではコーヒーとして美味しく飲むことができません。

そこで、焙煎が必要となります。焙煎することで、生豆に含まれる余分な酵素や水分を除去し、生豆に含まれる糖やアミノ酸は、焙煎中の高温で反応し、コーヒー特有の風味や香りを生み出します。焙煎士は、この反応をコントロールすることで、様々な味わいのコーヒーを作り出すのです。

さらに、焙煎によって豆の細胞構造が変化し、脆くなります。この状態では、豆を粉砕してコーヒーを抽出しやすくなります。焙煎前の生豆は青臭い色をしていますが、焙煎によって美しい茶色に変化します。この色の変化は、コーヒーの品質を判断する指標の一つにもなっています。

焙煎士の仕事とは?

焙煎士は、生のコーヒー豆(生豆)を焙煎することで、コーヒー本来の風味や香りを引き出すプロフェッショナルです。彼らは生豆の状態を見極め、最適な焙煎方法を選択し、焙煎の過程を管理します。その仕事の一例をあげてみます。

1. 生豆の選定


焙煎士の仕事は、良質な生豆を選ぶことから始まります。生豆は、品種や産地、収穫年度によって品質が大きく異なります。焙煎士は、これらの情報を理解し、目的に合った生豆を選定します。また、生豆の水分量や欠点豆の混入率なども確認し、焙煎に適した状態であるかを判断します。

2. 焙煎方法の選択


生豆の特性を理解した上で、焙煎士は最適な焙煎方法を選択します。焙煎度は、ライトロースト、シナモンロースト、ミディアムロースト、ハイロースト、シティロースト、フルシティロースト、フレンチロースト、イタリアンローストの8段階に分けられます。

ライトロースト:非常に浅い焙煎で、酸味が強く、豆の個性が感じられます。
シナモンロースト:ライトローストよりやや深く、シナモンのような香ばしさがあります。
ミディアムロースト:バランスの取れた風味で、酸味と甘みが調和しています。
ハイロースト:ミディアムローストよりやや深く、甘みと苦味のバランスが良いです。
シティロースト:豆の表面に油分が出始め、苦味と甘みが強くなります。
フルシティロースト:豆の表面に油分が多く浮き、苦味が強調されます。
フレンチロースト:深い焙煎度で、苦味と香ばしさが強く感じられます。
イタリアンロースト:最も深い焙煎度で、苦味が非常に強く、酸味はほとんど感じられません。

焙煎士は、生豆の特性や目的とする風味に合わせて、これらの焙煎度を選択します。また、焙煎プロファイル(焙煎温度と時間の関係)を調整することで、同じ焙煎度でも異なる風味を引き出すことができます。

3. 焙煎工程の管理



焙煎士は、焙煎機を使って生豆を焙煎します。この過程で、温度や時間、空気の流れなどを緻密に制御し、豆の状態を見極めながら焙煎を進めます。

焙煎工程は、以下のような段階に分けられます。

生豆の投入:生豆を焙煎機に投入し、予熱を開始します。
ドライング(脱水)フェーズ:豆に含まれる水分が蒸発し、豆が膨張します。
メイラード(褐変)フェーズ:豆の色が黄色から茶色に変化します。
ファーストクラック(1ハゼ):豆から水蒸気が放出され、パチパチと音がします。
ディベロップメントフェーズ:化学変化によりフレーバーが引き出される。そのまま進むと2度目の破裂であるセカンドクラック(2ハゼ)が起こる。
焙煎の完了:目的とする風味や色に達したら、焙煎を終了します。
冷却:焙煎された豆を素早く冷却し、酸化を防ぎます。

焙煎士は、これらの段階を理解し、豆の状態を見ながら火力や時間を調整します。わずかな変化が豆の味や香りに大きな影響を与えるため、高度な技術と経験が求められます。


4. カッピング


焙煎士の仕事は、焙煎した豆の品質を確認することでも重要です。焙煎後のコーヒーをカッピング(味見)し、風味や香り、後味などを評価します。このテイスティングを通じて、焙煎士は自らの焙煎技術を磨き、より良いコーヒーを提供できるよう努めています。

コーヒーに特化した焙煎機

焙煎士が主に使用するのは、ドラム式焙煎機です。ドラム式焙煎機は、回転するドラム内で豆を攪拌しながら熱を加えます。熱源には、ガスバーナーや電気ヒーターが用いられます。



ガス式のドラム焙煎機は、ガスバーナーの火力を調整することで、温度コントロールが容易です。また、ガスの燃焼による熱が豆に直接伝わるため、風味の良いコーヒーに仕上げることができます。一方、電気式のドラム焙煎機は、電気ヒーターによって間接的に熱を加えます。温度の制御が正確で、安定した焙煎が可能です。

ドラム式焙煎機の特徴は、比較的ゆっくりと焙煎が進むことです。豆の内部まで熱が伝わりやすいため、香ばしさが強調されたコーヒーに仕上がります。また、小ロットの焙煎に適しているため、カスタムオーダーにも対応しやすいです。

焙煎時間は、焙煎度によって異なります。ライトローストでは8~10分程度、ミディアムローストでは10~14分程度、ダークローストでは14~20分程度が一般的です。ただし、これは豆の種類や量、焙煎機の性能によって変動します。

焙煎士は、焙煎機の特性を理解し、豆の種類や目的に合わせて火力や時間を調整します。また、焙煎機のメンテナンスや設定の調整も、焙煎士の重要な仕事の一つです。

農園からカップに注がれるまでの流れ


コーヒーは、以下のような流れで消費者に届けられ、飲み物となります。

コーヒー農園で栽培・収穫
生豆の選別・精選(プロセス)
消費国への生豆の輸出・輸入
焙煎士による焙煎
パッケージング・流通
コーヒー豆の粉砕
コーヒーの抽出

この中で、焙煎士は4番目の工程を担当します。つまり、生豆が輸入された後、消費者に届けられる前の重要な役割を果たしているのです。

焙煎士は、コーヒー農園や生豆の輸出入業者から良質な生豆を仕入れ、焙煎によってコーヒーを飲料できる状態にします。そして、焙煎されたコーヒー豆は、パッケージングや流通の工程を経て、消費者に届けられます。もちろん焙煎された後にコーヒーショップで、飲み物として提供される場合もあります。

消費者の手に渡ったコーヒー豆は、使用する直前に粉砕されます。コーヒーミルを使って豆を粉砕することで、コーヒーの表面積が増え、お湯との接触面積が広がります。これにより、コーヒーの成分が効率よく抽出されるのです。粉砕の具合は、抽出方法に合わせて調整されます。

粉砕されたコーヒーは、ドリップ、エスプレッソ、フレンチプレスなど、様々な方法で抽出されます。抽出の際は、お湯の温度や量、抽出時間などが重要なポイントとなります。これらを適切に調整することで、コーヒー本来の味わいを引き出すことができるのです。

このように、焙煎士は、コーヒーが農園から消費者に届けられる過程の中核を担っています。彼らの技術と知識が、私たち消費者が味わうコーヒーの品質を大きく左右しているのです。

コーヒーを飲む人にとっての焙煎とは

消費者にとって、焙煎士の存在は直接目に見えるものではありませんが、コーヒーの味や香りに大きな影響を与えています。焙煎士が生豆の特性を理解し、適切な焙煎を行うことで、コーヒー本来の美味しさが引き出されます。

また、焙煎士は常に新しい焙煎方法や技術を研究し、革新的なコーヒーを生み出そうと努力しています。その結果、私たち消費者は多様な味や香りのコーヒーを楽しむことができるのです。

特にスペシャルティコーヒーは、産地特性の優れた品質の高い生豆であり、その質をカップまで伝える役割を果たすのは、焙煎士です。消費者は、このようなこだわりのコーヒーを通じて、焙煎士の技術や情熱を味わうことができます。

さらに、コーヒーショップやカフェでは、焙煎士自らがコーヒーを淹れることも珍しくありません。焙煎士とコーヒーを飲む人が直接対面することで、コーヒーに対する理解や愛着が深まります。このような体験は、コーヒーを単なる嗜好品ではなく、文化や芸術として捉える機会にもなるでしょう。



「焙煎士」は、コーヒー生豆から美味しさを引き出すプロフェッショナルです。彼らは、生豆の選定から焙煎、テイスティングまで、コーヒーの品質を左右する重要な役割を担っています。

コーヒーが農園から消費者に届けられる過程の中で、焙煎士は中核的な存在です。彼らの技術と知識によって、私たちはいつでも美味しいコーヒーを楽しむことができるのです。

また、焙煎士の存在は、コーヒーを文化や芸術として捉える機会も与えてくれます。スペシャルティコーヒーやコーヒーショップでの体験を通じて、私たち消費者はコーヒーの奥深さや魅力を発見できるでしょう。

焙煎士には、多様な嗜好やバックグラウンドを持った人々がいます。それぞれの焙煎士が、自らの個性や経験を活かして、ユニークなコーヒーを生み出しています。この多様性こそが、コーヒー文化を豊かにし、消費者に様々な選択肢をもたらしているのです。

今後も焙煎士の活躍によって、より多様で革新的なコーヒーが生み出されていくことが期待されます。コーヒーを飲む際は、焙煎士の存在にも思いを馳せ、そのこだわりや情熱を味わってみてはいかがでしょうか。


2024.5.21
CROWD ROASTER