STORY

「甘さ」と「クリーンカップ」を引き出すのが究極の目的 萩原大智焙煎士

THE COFFEESHOP(東京・富ヶ谷)萩原大智さんインタビュー

 


東京大学駒場キャンパスのすぐ裏の閑静な場所にある「THE COFFEESHOP ROAST WORKS」。ガラス張りの店内にはPROBATの12kg窯が置かれ、この街の中に香ばしいコーヒーの香りを漂わせている。

実際、近隣のオフィスに勤める人や住む人から愛されるこのお店は、そうした人たちが、気軽に立ち寄れるコーヒースタンドの役割を果たしている。毎日、気に入った定番の銘柄を楽しむこともできるが、THE COFFEESHOPのもう一つの楽しみ方は、毎週のようにラインナップに加わる新しい銘柄を試すことだ。

コーヒーの楽しみ方についての発信も、とても積極的におこなっているTHE COFFEESHOPは、スペシャルティコーヒーについて、いつも新しい発見を提供してくれるコーヒーショップだといえる。

このロースタリーを切り盛りし、焙煎士として活躍しているのが萩原大智さん。スペシャルティコーヒーに魅せられて焙煎士を志した、新進気鋭のロースターだ。

 

スペシャルティコーヒーとの運命的な出会い

 
焙煎士である萩原さんのコーヒーの原体験は、意外にも東京・神保町のクラシックな喫茶店にあった。

「大学が神保町の近くだったので、よく授業をサボって喫茶店で小説を読んだりしていたんです。思い返すと、いつも自分の傍らには当たり前にコーヒーがあった。なんだか提供する側に回りたいなぁと思ったのがきっかけかもしれません」

新卒でカフェチェーン店に就職して3年が経過した頃、新業態のハンドドリップ専門店の立ち上げを担当することになった。そこでスペシャルティコーヒーに出会い、衝撃を受ける。
 

「スペシャルティコーヒーを扱う中で、一番魅力を感じて自分の特性にも合っていると思った仕事が焙煎でした。自分はやや神経質で完璧主義なところがあるのですが、終わりなく理想を追求していく焙煎の仕事においてはむしろ向いている部分かなと思っています」

焙煎を一生の仕事にしようと決意した萩原さんは、仕事をやめ、自家焙煎のコーヒーショップを巡る。その中で「豆選びから飲むところまで、トータルで満足できるコーヒー体験を届ける」というコンセプトの「THE COFFEESHOP」に出会い焙煎士として就職。ここから本格的に焙煎に取り組むようになる。
 

豆のポテンシャルを引き出したい

 
萩原さんが理想とする焙煎とは、「コーヒー生豆の持っているポテンシャルを見極め、最大化して提案すること」だ。
 
「豆ごとに引き出したいポイントがフレーバーなのか、甘さなのか、質感なのかを、焙煎中の生豆の様子とカッピングから判断します。そのうえで、豆の個性を最大化できるような焙煎アプローチ、最終的な焙煎度合いを決めているんです」
 
 

THE COFFEESHOPでは、COE(カップ・オブ・エクセレンス)入賞の銘柄なども扱っており、品質についてもこだわり抜いている。ただ、コーヒーの価値は生豆の品質だけでは決まらないと萩原さんは言う。

「スペシャルティコーヒーの業界では、いい生豆を手に入れることが最も重要と言われています。ですが、それ一辺倒になってしまうのはどうかとも思うんです。生産者は日々、品種や精製について研究・努力を重ねていますが、我々ロースターは果たしてそれと同じくらいの努力ができているのか? と常に自問しています」

焙煎中の豆の状態を確認しながら、最適な調整を加えるのも、ある意味では当然の努力だ。常に心がけていることは、できるだけ五感を使って情報を集めて、焙煎に生かすこと。

「生豆にないものは焙煎で生み出すことはできませんし、豆ごとに良いところは違うので、それぞれの持っている魅力をしっかりと引き出してあげることが大切です。コーヒーは毎日飲むものなので、毎日飲みたいと思えるものが理想的な仕上がり。「甘さ」と「クリーンカップ」の両方が揃うことが、毎日飲みたいと思えるかどうかの第一歩だと考えています」
 

スペシャルティコーヒーのハードルを下げるために


理想のコーヒーを追い求めている萩原さんだが、同時にコーヒーのハードルをもっと下げたいとも考えている。

「日本人って多分、コーヒー牛乳とかコーヒー味のお菓子を含めると、コーヒーというものを口にしたことがない人はほぼいないと思うんですよね。だけど、私たちのようなお店のスペシャルティコーヒーとなると、よくわからないとか難しそうと思われたり。その一方でカフェインを取るためだけの飲み物として扱われることもあって、それはちょっともったいないと感じます」
 

スペシャルティコーヒーにまつわるハードルのひとつが、淹れ方、抽出方法だ。美味しいコーヒー豆を購入しても、うまく抽出できないという悩みを持つ来店者も多いという。そこで萩原さんは、誰でも簡単に淹れられる方法をレクチャーしている。

「自宅で初めて豆から挽いたり淹れたりしたいという人には、HARIOの『スイッチ』というドリッパーをおすすめしています。粉、お湯の量、時間を測れれば、誰でも同じクオリティのコーヒーを淹れられます」

そのスタンダードなレシピは、18gの豆を挽き、250mlのお湯を一気に注ぎ、2分経ったらスイッチを押して抽出するというだけ。豆の焙煎度によって浅煎りなら挽き目を細かくしたり、ドリッパーを撹拌するといった応用方法も教えてくれた。
 

安らげるひとときのための1杯を

 
萩原さんの焙煎士としての経歴はそこまで長いわけではない。しかし、焙煎・カッピングしているコーヒーの種類の経験値では引けを取らないと自負している。

「店では毎月4種類の新しいシングルオリジンを提供していて、実際に販売する分の数倍の量のサンプルを焙煎したりカッピングしたりしていますから」

CROWD ROASTERで初めて出会う豆を、萩原さんがいかに焙煎してくれるか。それがCROWD ROASTERの最も基本的な楽しみ方でもある。

「多種多様なコーヒー豆の個性を引き出せるような焙煎を心がけていきますので、僕の思うそれぞれのコーヒー豆のいいところ、味わってほしいポイントを、ぜひ一緒に体験していただきたいです」
 

気になった方は、ぜひCROWD ROASTERで萩原さんに焙煎のリクエストをしてみてください。


SHOP INFORMATION
THE COFFEESHOP
東京都渋谷区富ヶ谷2-22-12
営業時間:10:00〜SUNSET(年中無休)
https://www.thecoffeeshop.jp/