
2025年6月12日、東京・下北沢のAdriftにて開催されたTHE BARISTA LEAGUE ASIA。
東京初開催となったこの記念すべき大会で、ロシアチーム(Kirill & Vasilina)が見事優勝を果たしました。
世界6地域で開催される2025年シーズンで唯一のアジア開催として、東京のコーヒーシーンの成熟度を印象づける歴史的な一夜となりました。

THE BARISTA LEAGUEとは?革新的なコンペティション理念
THE BARISTA LEAGUEは2015年、スウェーデンのバリスタチャンピオン、Steven Maloneyによって創設されました。従来のバリスタコンペティションが高額な参加費や機材への投資を要求し、現場で働くバリスタにとってアクセスしにくいという課題を解決するため、「バリスタによるバリスタのための」イベントとして誕生したのです。

「パーティーに偽装されたコンペティション」というユニークなコンセプトの下、実践的なスキルを重視し、コミュニティ形成を促進する独自のアプローチを貫いています。
参加費無料、機材は提供、DJ演出による親しみやすい雰囲気など、従来の競技会の固い印象を一新する革新的なフォーマットが大きな特徴です。
2025年シーズンでは、従来の12都市開催から6大陸の代表都市での開催に集約され、アジア、ヨーロッパ、北米、南米、アフリカ、オセアニアの各地域で最強チームを決定する新たなフォーマットに進化しました。アジアの代表都市として東京が選ばれたことは、日本のコーヒー文化の独自性と高い技術水準が国際的に認められた証明といえるでしょう。
実践重視の競技内容でバリスタのスキルを競う
今回の大会では事前の選考を通過した10組のチーム(2人1組、計20名)が参加し、約200名の業界関係者やコーヒー愛好家が観戦しました。競技は実際のカフェ運営で求められるスキルを重視した2つのチャレンジで構成されました。

メインとなるドリンクチャレンジでは、制限時間15分以内に6種類のドリンクを完成させる必要があります。
エスプレッソで基本技術の正確性を、プラントベースビバレッジでオートミルク等を使用した現代的ニーズへの対応力を評価します。
コールドブリューモクテルでは創造性と技術の融合を、ボダム・フレンチプレス使用によるフィルターコーヒーでは抽出技術を競います。
さらに、ノンコーヒー・ミステリードリンクで幅広い飲料知識とアダプテーション能力を、審査員チョイスドリンクで即興性と柔軟性をそれぞれ試されました。
センサリーチャレンジでは、制限時間5分でSCAフレーバーホイールを使用したテイスティング能力をテストし、バリスタに不可欠な味覚と嗅覚の精度、フレーバー識別能力が評価されました。


評価基準は味覚品質が40%と最も重視され、サービス品質20%、プレゼンテーション15%、技術的実行力15%、清潔性・効率性10%という配分で総合的に審査されました。
豪華審査員陣と多彩な出場者たち


非常に豪華な顔ぶれのゲストMCと審査員も今回の大会の特徴でした。日本のバリスタ、スペシャルティコーヒー界のレジェンドが集結。アジア人初のWBC制覇者である井崎英典さんと、Standart Magazineの室本寿一さんがダブルMC。お二人の高いテンションの司会ぶりで会場を大いに盛り上げました。

審査員は、CROWD ROASTERアドバイザーであり、ジャパンバリスタチャンピオン3回優勝の石谷貴之さんがヘッドジャッジに。審査員チョイスのドリンクは石谷さんが競技者が提供するドリンクのなかからその場で選びます。
CROWD ROASTERの参加焙煎士からは、石井康雄さんがフィルターコーヒーの審査員として参加。石井さん率いる、Leaves Coffee Roastersはフィルターコーヒー抽出用のコーヒーの焙煎も担当しました。Leavesのチームは会場内の「THE BARISTA LEAGUE CAFE」で、競技に使われるコーヒーを参加者に提供しました。

そのほかの審査員は、鈴木樹さん、深山晋作さん(Barista Map Coffee Roasters)、畠山大輝さん(Bespoke Coffee Roasters)というチャンピオン揃いの顔ぶれ。皆さんが楽しそうに審査されているのが印象的でした。
ちなみに、ミステリードリンクをチョイスするのは、会場から選ばれた観客のひとり。MCに指名されればこの豪華審査員に加わって、ドリンクを味わうことができるシステムでした。

優勝したロシアのKirill & Vasilinaペアの他にも、出場者は実に多彩な顔ぶれ。
THE BARISTA LEAGUE ASIAレポートの記事後編では、各チームが健闘した模様を写真とともにお届けします。
後編もお楽しみに。