「黄金の豆」を育てる国。SCAJ 2026コスタリカブースのカッピングで感じた、おいしさと信頼のかたち【SCAJ2026】
2026年10月14日から17日にかけて、東京ビッグサイトで今年もアジア最大級のスペシャルティコーヒーイベント「SCAJ 2026」が開催されました。世界各国の生産者、インポーター、ロースター、器具メーカーが一堂に会する展示会は、さながら“コーヒーの万博”です。
今回は駐日コスタリカ大使館が運営するブースにお招きいただき、コスタリカのコーヒーをカッピングしながら、現地の方々にお話を伺いました。
今回は駐日コスタリカ大使館が運営するブースにお招きいただき、コスタリカのコーヒーをカッピングしながら、現地の方々にお話を伺いました。

ブースに着くと、そこはラテンアメリカ
ブースに足を踏み入れると、空気が一気にラテンアメリカに変わります。出迎えてくれたのは、駐日コスタリカ大使館の公式マスコットキャラクター、Ticoちゃん。会期中は毎時間カッピングが行われていて、次のセッションに向けた準備が慌ただしく進んでいました。

コスタリカがSCAJに出展するのは、昨年に続いて2年連続です。実は昨年の出展は8年ぶりの復帰だったそうです。
「コスタリカから見て、日本の市場はとても大事です。ここにもっと力を入れて、皆さんにおいしいコーヒーを届けたい。もっと知ってもらいたいという思いで、今年も出展しました」(ブース担当者)
同席していた生産者の方も、こう話してくれました。「日本人はスペシャルティコーヒーが大好き。コスタリカにはおいしいコーヒーがいっぱいあります。ぜひみんな来てください」
期待を超えた、気合の入ったラインナップ
大使館の方々と談笑しながら、ラテンアメリカらしい明るい雰囲気のなかでカッピングがスタート。ブースにはかなりの種類のコーヒーが持ち込まれていたそうですが、このセッションではある農園の6種を、CROWD ROASTERのQグレーダーと共にテイスティングしました。
まず驚いたのは、そのフレッシュさです。このイベントのために生産国側で焙煎されたものだと聞きましたが、それを差し引いてもとても生き生きとした印象で、現地での生豆の保管・管理がしっかりしていることが想像できました。
コスタリカのコーヒーと聞いて私がまず思い浮かべるのは、リッチな甘さと、生産処理(プロセス)に由来する複雑な酸味です。コスタリカは2000年代以降、生産者が自ら精製設備を持つ「マイクロミル」が広がった国として知られ、ハニープロセスをはじめとする多彩な生産処理で、同じ品種からでも驚くほど幅のある味わいを生み出してきました。今回のラインナップは、まさにそうしたコスタリカの強みが詰まった、気合の入ったロットばかり。正直なところ、期待していた以上のカップに出会えました。
なかでも個人的に好きだったのが、品種JAVAのナチュラル・レポサド。高い温度ではバラやブルーベリーのような華やかでフルーティーな香り、冷めるにつれてメロン、さらにスパイスやカカオニブへと移ろい、最後まで深い甘さが続く、表情豊かなカップでした。
JAVAはエチオピアの在来種に由来する品種ですが、同じエチオピア系でもゲイシャとは別のグループに属するのだそうです(参考:Coffee Fanatics「アジアの品種」)。そして「ナチュラル・レポサド」は、ナチュラルの発酵工程の途中で、あえてバッグやタンクなどで一定期間“休ませる(寝かせる)”工程を挟む、手間のかかる製法です。品種の個性をきちんと捉えたうえで、丁寧に発酵・生産処理されていることが伝わってきました。
6種のなかで私が最も高く評価したカップは、赤いプラムや柑橘、はちみつ、フローラルな香りが冷めるまで綺麗に続き、酸味のコントラストが実に美しいものでした。あとになって、それがCOE(カップ・オブ・エクセレンス)で1位を獲得したロットだと知り、思わず納得しました。
まず驚いたのは、そのフレッシュさです。このイベントのために生産国側で焙煎されたものだと聞きましたが、それを差し引いてもとても生き生きとした印象で、現地での生豆の保管・管理がしっかりしていることが想像できました。
コスタリカのコーヒーと聞いて私がまず思い浮かべるのは、リッチな甘さと、生産処理(プロセス)に由来する複雑な酸味です。コスタリカは2000年代以降、生産者が自ら精製設備を持つ「マイクロミル」が広がった国として知られ、ハニープロセスをはじめとする多彩な生産処理で、同じ品種からでも驚くほど幅のある味わいを生み出してきました。今回のラインナップは、まさにそうしたコスタリカの強みが詰まった、気合の入ったロットばかり。正直なところ、期待していた以上のカップに出会えました。
なかでも個人的に好きだったのが、品種JAVAのナチュラル・レポサド。高い温度ではバラやブルーベリーのような華やかでフルーティーな香り、冷めるにつれてメロン、さらにスパイスやカカオニブへと移ろい、最後まで深い甘さが続く、表情豊かなカップでした。
JAVAはエチオピアの在来種に由来する品種ですが、同じエチオピア系でもゲイシャとは別のグループに属するのだそうです(参考:Coffee Fanatics「アジアの品種」)。そして「ナチュラル・レポサド」は、ナチュラルの発酵工程の途中で、あえてバッグやタンクなどで一定期間“休ませる(寝かせる)”工程を挟む、手間のかかる製法です。品種の個性をきちんと捉えたうえで、丁寧に発酵・生産処理されていることが伝わってきました。
6種のなかで私が最も高く評価したカップは、赤いプラムや柑橘、はちみつ、フローラルな香りが冷めるまで綺麗に続き、酸味のコントラストが実に美しいものでした。あとになって、それがCOE(カップ・オブ・エクセレンス)で1位を獲得したロットだと知り、思わず納得しました。

「真っ赤になるまで待つ」という当たり前の積み重ね
生産者として何にこだわってコーヒーをつくっているのか。そう尋ねると、通訳を介してこんな答えが返ってきました。
「品質には非常にこだわっています。まず、どの品種を育てるのか。そして収穫の際には、コーヒーチェリーが真っ赤に熟し、コーヒーとしていちばん良いコンディションになるまで待ってから摘み取る。そうすることで、甘みのある品質の高いコーヒーが収穫できます。より良いコーヒーを、世界中の皆さんに届けたいんです」
品種選びと完熟収穫。言葉にすればシンプルですが、カップで感じたリッチな甘さは、こうした基本を一つひとつ丁寧に積み重ねた結果なのだと、あらためて感じました。
「品質には非常にこだわっています。まず、どの品種を育てるのか。そして収穫の際には、コーヒーチェリーが真っ赤に熟し、コーヒーとしていちばん良いコンディションになるまで待ってから摘み取る。そうすることで、甘みのある品質の高いコーヒーが収穫できます。より良いコーヒーを、世界中の皆さんに届けたいんです」
品種選びと完熟収穫。言葉にすればシンプルですが、カップで感じたリッチな甘さは、こうした基本を一つひとつ丁寧に積み重ねた結果なのだと、あらためて感じました。
収入の約8割が生産者へ。法律が支えるフェアな仕組み

今回のお話でとくに印象に残ったのが、コスタリカという国のコーヒーへの向き合い方です。コーヒーはコスタリカにとって重要な輸出品であり、なかでもスペシャルティコーヒーはとても大切な存在だといいます。国としてサステナビリティに力を入れ、“クリーンなコーヒー”を届けることに昔から取り組んできたそうです。
それを支えているのが、「法律第2762号」という仕組みです。
「コスタリカは、世界的にも珍しい国だと思います。法律第2762号によって、収入の多くが必ず生産者に戻るようになっていて、FOB(輸出価格)でいうとおよそ8割が生産者に渡ります。2万7,000以上の生産者のご家族を守るために、国として法律できっちりと決まっているんです」(ブース担当者)
後から調べてみると、この法律は1961年に制定された、コーヒーの生産者・精製業者・輸出業者の関係を定めるものでした。条文に「8割」と書かれているわけではありません。精製業者の利益は9%まで、輸出業者の利益は2.5%までというように、生産者以外の取り分に上限を設けることで、残りが生産者に届く仕組みです。
その運用を担っているのが、コスタリカ・コーヒー協会(ICAFE)です。輸出の契約はすべてICAFEに登録され、相場から大きく外れた安値の取引は認められないこともあるといいます。取引が透明で公正に行われているかを、国の仕組みとして見守っているのです。
「コスタリカでは、それがもう当たり前のこととして業務に組み込まれている。だから私たちは、とても仕事がしやすいんです。人権にもきちんと目を向けて、守ってくれる国ですから」(ブース担当者)
日本のコーヒーファンは、自分が飲んでいる一杯の対価が、きちんと生産者の暮らしに届いているのかをとても気にしています。その土台が国の制度として整っているからこそ、生産者はおいしいコーヒーづくりに集中できる。安心と信頼の上に成り立つ高品質なコーヒーは、ひとつの理想的なかたちだと思いました。
それを支えているのが、「法律第2762号」という仕組みです。
「コスタリカは、世界的にも珍しい国だと思います。法律第2762号によって、収入の多くが必ず生産者に戻るようになっていて、FOB(輸出価格)でいうとおよそ8割が生産者に渡ります。2万7,000以上の生産者のご家族を守るために、国として法律できっちりと決まっているんです」(ブース担当者)
後から調べてみると、この法律は1961年に制定された、コーヒーの生産者・精製業者・輸出業者の関係を定めるものでした。条文に「8割」と書かれているわけではありません。精製業者の利益は9%まで、輸出業者の利益は2.5%までというように、生産者以外の取り分に上限を設けることで、残りが生産者に届く仕組みです。
その運用を担っているのが、コスタリカ・コーヒー協会(ICAFE)です。輸出の契約はすべてICAFEに登録され、相場から大きく外れた安値の取引は認められないこともあるといいます。取引が透明で公正に行われているかを、国の仕組みとして見守っているのです。
「コスタリカでは、それがもう当たり前のこととして業務に組み込まれている。だから私たちは、とても仕事がしやすいんです。人権にもきちんと目を向けて、守ってくれる国ですから」(ブース担当者)
日本のコーヒーファンは、自分が飲んでいる一杯の対価が、きちんと生産者の暮らしに届いているのかをとても気にしています。その土台が国の制度として整っているからこそ、生産者はおいしいコーヒーづくりに集中できる。安心と信頼の上に成り立つ高品質なコーヒーは、ひとつの理想的なかたちだと思いました。
陸地の0.03%に、世界の生き物の約6%が暮らす国
お話はコスタリカの自然にも及びました。
「人口およそ500万人の小さな国に、世界の動植物の約6%が生息しているんです。国土の半分以上が森林に覆われていて、高いビルもあまりない。先進国だけど、先進国じゃないくらい緑豊かな国です」(ブース担当者)
地球の陸地のわずか0.03%ほどの国土に、驚くほど豊かな生態系が息づいている。気候にも恵まれたその土地で、自然とともに歩む人々がコーヒーを育てています。カップから感じたクリーンさや透明感は、こうした環境と無関係ではないのだろうと想像しました。
「人口およそ500万人の小さな国に、世界の動植物の約6%が生息しているんです。国土の半分以上が森林に覆われていて、高いビルもあまりない。先進国だけど、先進国じゃないくらい緑豊かな国です」(ブース担当者)
地球の陸地のわずか0.03%ほどの国土に、驚くほど豊かな生態系が息づいている。気候にも恵まれたその土地で、自然とともに歩む人々がコーヒーを育てています。カップから感じたクリーンさや透明感は、こうした環境と無関係ではないのだろうと想像しました。
おいしさがあってこそ、物語は響く
インタビューの最後に、私からもこんな思いを伝えました。
いまのスペシャルティコーヒーの世界では、生産の背景にあるストーリーやサステナビリティがとても大切にされています。けれど、それも「おいしい」という感動があってこそ、多くの人の心に響くもの。今回のカップは、その両方をきちんと届けてくれるものでした。だからこそ、すべてを丁寧に積み重ねてくれている生産者の皆さんに、心から感謝しています。
CROWD ROASTERは、日本のトップロースターたちとつながり、同じ生豆をさまざまなロースターに焙煎してもらうことで、コーヒーの多彩な表情を引き出すことを目指しています。ひとつの焙煎だけでは見えない、コスタリカのコーヒーが持つ魅力を、これからもいろいろな角度から届けていけたら嬉しいです。
いまのスペシャルティコーヒーの世界では、生産の背景にあるストーリーやサステナビリティがとても大切にされています。けれど、それも「おいしい」という感動があってこそ、多くの人の心に響くもの。今回のカップは、その両方をきちんと届けてくれるものでした。だからこそ、すべてを丁寧に積み重ねてくれている生産者の皆さんに、心から感謝しています。
CROWD ROASTERは、日本のトップロースターたちとつながり、同じ生豆をさまざまなロースターに焙煎してもらうことで、コーヒーの多彩な表情を引き出すことを目指しています。ひとつの焙煎だけでは見えない、コスタリカのコーヒーが持つ魅力を、これからもいろいろな角度から届けていけたら嬉しいです。
「黄金の豆」に込められたもの

コスタリカでは古くから、コーヒーは「Grano de Oro(黄金の豆)」と呼ばれてきました。かつては国を豊かにする輸出品としての意味合いが強かった言葉かもしれません。
けれど今回、カップを通して、そして現地の方々の言葉を通して感じたのは、それだけではありませんでした。小さな国土の豊かな自然から生まれ、自然とともに歩む人々の理解と努力、そして愛情によって育まれたコーヒー。それこそがまさに「黄金の豆」なのだと、実感したカッピングでした。
SCAJ 2026(SCAJ ワールド スペシャルティコーヒー カンファレンス アンド エキシビション 2026)
会期:2026年10月14日(水)〜17日(土)
会場:東京ビッグサイト 南展示棟1〜4ホール
公式サイト:https://scajconference.jp
取材・文:CROWD ROASTER 山本翔平
けれど今回、カップを通して、そして現地の方々の言葉を通して感じたのは、それだけではありませんでした。小さな国土の豊かな自然から生まれ、自然とともに歩む人々の理解と努力、そして愛情によって育まれたコーヒー。それこそがまさに「黄金の豆」なのだと、実感したカッピングでした。
SCAJ 2026(SCAJ ワールド スペシャルティコーヒー カンファレンス アンド エキシビション 2026)
会期:2026年10月14日(水)〜17日(土)
会場:東京ビッグサイト 南展示棟1〜4ホール
公式サイト:https://scajconference.jp
取材・文:CROWD ROASTER 山本翔平










