
昨年、森藤友通さん率いるREDPOISONの2店舗目として、横浜駅から徒歩15分ほどの場所にオープンした「REDPOISON Yokohama」。そのコンセプトは「横濱夜珈琲」ということで、夜の時間帯を中心にオープンしている大人のためのコーヒーショップです。
クリアで果実感に溢れた赤くて甘い極上の一杯を追求する、REDPOISONの新たな拠点を訪れました。


インパクトのあるその店名とは対照的に、森藤さんが目指すのは「多くの人においしいと思ってもらえる」優しいコーヒー。自ら設計したオリジナル焙煎機を操り、独自の技術論と哲学でコーヒーと向き合う森藤さんに、焙煎への思いを語っていただきました。
焙煎技術への探求と質感へのこだわり
「質感の印象がいいコーヒーを作りたい。月並みですがシルキーでとろんとなめらか、粘性のあるコーヒーが好きですね」
森藤さんが追求するのは、最後の一滴まで続く理想の質感。その鍵となるのが「水抜き」の技術です。
森藤さんが追求するのは、最後の一滴まで続く理想の質感。その鍵となるのが「水抜き」の技術です。
「質感も水抜きで大きく変わると思っています。なるべく必要な部分だけを必要なタイミングで抜く。パナマ ゲイシャのようにかたくて水分量もしっかりある豆は、ある程度最初の段階で水抜きをしっかり入れないと、なかなか水が抜けなくてフレーバーが発達しない。ただ、水抜きをやりすぎると成分ごと抜けてしまってスカスカな味になってしまうので見極めが難しい」


この繊細なバランス感覚こそが、森藤さんの焙煎の真骨頂。数値では見えない部分を想像力で補いながら、理想の一杯を追求し続けています。
オリジナル焙煎機に込めた設計思想
森藤さんが3年の歳月をかけて完成させたオリジナル焙煎機「SOLID」。その設計には明確な思想があります。
「うちは焙煎機の蓄熱性を低く作ってあるんですよ。焙煎機って蓄熱性が高いほうが焙煎が安定するんですけど、それって逆に言えば、途中で変化させることが難しいってことなんです。やっぱり豆によって何がベストなのかって全然わからなくて、途中でブレたと思っても修正できるような焙煎機がいいなと」
容量に対して2倍の火力と排気量を持ちながら、微細なコントロールを可能にした設計。初めて焙煎する豆への対応力、そして季節を問わず安定した品質を実現するための工夫が随所に込められています。
「多くの人にとっておいしい」という哲学

REDPOISSONという印象的な店名とは裏腹に、森藤さんが目指すのは万人に愛される味わいです。
「自分は味見したときにうちのお客さんがどう思うか考えるんです。素晴らしいものをできるだけ皆さんに楽しんでいただき、コーヒーっておいしいんだなって思ってもらいたい」
「自分は味見したときにうちのお客さんがどう思うか考えるんです。素晴らしいものをできるだけ皆さんに楽しんでいただき、コーヒーっておいしいんだなって思ってもらいたい」
「基本的にコミュニケーションが苦手なんですけど、何も話せなくても伝わるコーヒーを無意識に目指しているところがあって。もともとデザインの仕事をやっていたんですが、初めて100%自分の趣味だけで作ったのがこのお店なんですよ。入りにくいと言われたりもするんですが、コーヒーでそんなことないよって伝えたいんです」
見た目とのギャップを逆手に取り、コーヒーを通じて自分の優しさを表現したいという思い。それが森藤さんの焙煎哲学の根底にあります。
どんな淹れ方でもおいしく
森藤さんのコーヒーへの配慮は、焙煎だけにとどまりません。
「どう淹れてもそれなりに飲みやすくおいしくなるんじゃないかなって思います。もともと、うちが通販のみだったこともあって、どういう淹れ方をされてもそれなりの味が出るようにと目指してやっていたところがあります」
「どう淹れてもそれなりに飲みやすくおいしくなるんじゃないかなって思います。もともと、うちが通販のみだったこともあって、どういう淹れ方をされてもそれなりの味が出るようにと目指してやっていたところがあります」

お店では浸漬式のクレバードリッパーを使用し、「カッピングのプロトコルに従ったかたちで、抽出であえて味作りをしない」というスタイル。
「こういう風にしなさいとしてしまうと、楽しみ方が限定されてしまったり、場合によってはその淹れ方じゃないとおいしくなくなってしまうのは残念なんですよね」
「こういう風にしなさいとしてしまうと、楽しみ方が限定されてしまったり、場合によってはその淹れ方じゃないとおいしくなくなってしまうのは残念なんですよね」
究極の夢は、自分で栽培したコーヒーを

「究極な話かもしれませんけど、一番焼いてみたいのは自分で栽培したコーヒーですね。それがおいしいかどうかは置いておいて、農園で自分で収穫して、精選も自分でして、生豆を自分で焼く」
もともと「1から10までひとつ自分でものづくりを経験してみたい」という思いでジュエリーデザインを選んだ森藤さん。その探求心は今、コーヒーの世界で新たな可能性を追い求めています。

「失敗からしか学べないと思っていて、結構失敗するのが好きなんですよ。失敗だと思っていたらその先に成功の種があったりとか、コーヒーにハマったのもそこなんですよね」
技術への飽くなき探求心と、お客様への深い愛情。その両輪が生み出す森藤さんのコーヒーは、今日も多くの人の心を温かく包み込んでいます。

REDPOISON Yokohama
神奈川県横浜市西区浅間町2丁目101-3 ライジングビル1F
不定休(公式サイト、SNSでご確認ください)