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生産国と生産処理の関係 続編【Coffee Fanatic 三神のディープコーヒーワールド 第3回】

こんにちは!Coffee Fanatic三神です!!
 
 
前回のパートではコーヒーの生産国区分の内Colombia MildとOther Mildを解説しましたが、引き続き、Brazilian NaturalとRobustaについてもお話していきたいと思います!
 
 

コーヒーの生産国区分(Producing Countries’ Agreement)

Brazilian Natural Arabicas
ブラジル, エチオピア、パラグアイ

Colombia Mild Arabicas
コロンビア、ケニア、タンザニア

Other Mild Arabicas
ボリビア、ブルンジ、コスタリカ、キューバ、ドミニカ、エクアドル、エルサルバドル、グアテマラ、ハイチ、ホンジュラス、インド、ジャマイカ、マラウィ、メキシコ、ニカラグア、パナマ、パプアニューギニア、ペルー、ルワンダ、ベネズエラ、ザンビア、ジンバブエ

Robusta
アンゴラ、コンゴ民主共和国、ガーナ、ギニア、インドネシア、リベリア、ナイジェリア、 OAMCAF(ベナン、カメルーン、中央アフリカ共和国、コンゴ、コートジボワール、赤道ギニア、ガボン、マダガスカル、トーゴ)、フィリピン、シエラレオネ、スリランカ、タイ、トリニダード・トバゴ、ウガンダ、ベトナム

こうしてみるとNaturalに属している生産国は少なくてRobustaはかなり多いですね!!それでは早速行ってみましょう!!

Brazilian Natural Arabicas

 
アラビカコーヒー発祥の地なのになぜエチオピアがグループ名にならないかというと、やはりブラジルが最大のNaturalコーヒー生産国になり、この国がNaturalコーヒーの基準になるからですね。

Naturalがメインの生産国は、乾燥の際に広い面積が取れる、または雨季と乾季がはっきりしていて、乾燥中に雨が降りにくいといった条件が必要です。この条件をあわせ持つのがブラジルになります。パラグアイのコーヒーは聞いたことがありませんが、現在の生産量はマーケットとして無視できるくらい極小なのであまり掲載する意味がありませんね。
 
エチオピアは広域な乾燥場をとれるようなイメージがありませんが、特徴としてはこの国チェリーは均一に熟すので、収穫を複数回行う必要がありません。なので、時間的なメリットが取れる生産国です。

まあ、エチオピアの場合はアラビカコーヒーの発生地でもあるため、最も原始的なNaturalが生産処理として根付いているとも言えます。



Colombia Mildや、Other Mildなどの水洗式の国々では、Naturalのコーヒーは生産国内消費向けのLow Gradeで“輸出できないコーヒー”としての扱いでした。そもそもNaturalのPreparation (Process)は輸出規格として存在していないので、輸出できなかったのです。なので、前回の記事で生産処理自体に優劣があると言ったのはこういった背景があります。

2008年に日本で、エチオピアの農薬問題が出たときに、中米・ニカラグアの生産者が日本向けにNaturalのコーヒーを作ってくれたのですが、そのままだと輸出ができない(発酵欠点のコーヒーとみなされる)ため、国の機関に掛け合って、何とか輸出にこぎつけた経緯があります。この時、生産者はこのコーヒーの風味は欠点ではなく、顧客の要望によって作成しているため、「売り契約がある」といった説明で輸出許可を得ることができました。

またさらにエチオピアを深堀すると、この国では当然水洗式もあることは皆さんご存じだと思いますが、よく知っている方だと、上のグレードからG1, G2, G3, G4, G5などの序列があることも理解されているかと思います。

・・・・・ちなみにこのグレード、実はG1, G2は“水洗式のみ”が適合可能なグレードであり、Naturalの最高グレードは“G3”とされていました。なので、水洗式が上位である序列がなされていたのです。最初に政府からの縛りの無い輸出業者がG1等の名称をNaturalのコーヒーに使用して販売してましたが、これは実は“公式”ではなくて、自分たちで勝手に名乗っていたのに近い状態でした(/・ω・)/。

これはむちゃくちゃややこしー話ですが、エチオピア国内のContract区分はQ1, Q2となっていて、実質G1, G2と同じなのですが、輸出グレードの規格名称が国内での区分と異なっていたので、こういった事態が発生したと考えられます。政府系の輸出業者ではNaturalにG1の名乗りが許されず、他の輸出業者を横目で見ながら仕方なく“G3”として販売しなければならなかったことがあります。
エチオピア国内Specialty規格(Naturalの部)。グレードがQ1, Q2の記載になっている

・・・・・現在ではECX(Ethiopian Commodity Exchange)のレギュレーションが軟化したのと、スペシャルティコーヒーのさらなる台頭によりNaturalのコーヒーでもG1やG2の記載が行われることが一般的になりました。

Robusta

 
Naturalより下位のグループがこのRobusta(ロブスタ)のグループになります。Robusta種はArabica種の親に当たるのですが、実は“Species=種族”として市場に認知されたのはかなり最近のことで1897年です。このコーヒーの種族は1900年にさび病で壊滅的な被害を被った、インドネシアに導入されました。そしてRobustaの先物市場がロンドンに開かれたのは1958年のことです。
 
Robustaの生産国だとブラジル、ベトナム、インドネシアなどが上がりますが、実はRobusta種の発生地はタンザニアのビクトリア湖西側とされています。なので、タンザニアのBukobaロブなどが有名ですね。やっぱりこのRobustaのグループはアフリカの国々が大半を占めていますね。

ベトナムは2000年代に入ってぐんぐん生産量を伸ばしてきた国なので、私の以前の会社の先輩や上司に筋にあたるベテランのコーヒーマンからすると「え?ベトナムが??」という感じで、それほど主要な地位に就くとは思っていなかったそうです。今ではRobustaを3000万袋位作っているので、Robustaの生産量第1位の国として君臨しています。

インドネシアはSpecialtyでも知名度の高い国ですが、実はアラビカ種は国内生産の10%程度で、残りの90%はRobustaの生産になります。なので、堂々たるRobusta生産国になります。

Robustaでも生産処理は水洗式が存在していて、こちらは品質上位にあたります。インドネシアのWIB1(WEST INDISCHE BEREIDING=West Indies Preparation=西インド式生産処理)なんかが日本では代表的な水洗式Robustaになりますね。

最近では2050年問題(温暖化によるコーヒーの大幅な供給減少)を見据えて高品質Robustaの開発や鑑定士資格の確立等、この品種への注目も集まっているため、こうした国々でのRobusta種の生産や品種としての位置づけが変化していく可能性がありますね!

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というところのBrazilian NaturalとRobustaのお話でした。次回からはそれぞれの生産処理について詳しく見ていきたいと思います!!

それではみなさんごきげんよう!
 
2023.6.3
ファナティック三神

 
(参考)みんな誤解している?スターバックスと当時の焙煎度合などの近代史(前編)
https://coffeefanatics.jp/specialycoffee-peets-starbucks1/
Ryo Mikami

Ryo Mikami

大学卒業後とある事情からスターバックスに勤めたことをきっかけにコーヒーの可能性に邂逅。紆余曲折を経てスペシャルティコーヒー専門商社に入社。Fanatic道に開眼し、相場考察、産地訪問、品評会審査、大会コーチ、抽出、焙煎、機器提案等コモディティーからスペシャルティまで多岐にわたる業務に通じ現在に至る。CROWD ROASTERアドバイザー。