STORY

札幌らしいシティローストで「甘さ」を引き出す 成田学 焙煎士

札幌市すすきの、通称“5の5”(南5条西5丁目)に「珈琲屋」の看板を掲げた小さな喫茶店「coffee&chocolate Marley」(コーヒーアンドチョコレート マーレイ)はある。すすきの唯一のコーヒーショップとして、ビジネスマンから地元の人々まで、幅広い客層に親しまれている。

冬が長い北海道では、深煎りでコクと甘みのある昔ながらのコーヒーが親しまれてきた。その流儀を受け継ぎながら、自家焙煎したカカオ豆を使ったチョコレートと、世界中から選りすぐりのスペシャルティコーヒーで、新しいコーヒーを提案し続けているのがMarleyだ。

そんなMarleyのオーナーであり、バリスタや焙煎士も務めているのが成田学さん。独学で学んだ焙煎の技術は、さまざまな飲食業で培われた舌と感性によって磨かれてきた、コーヒー業界以外からの経験が生かされている。

老舗・宮越屋珈琲で身につけた焙煎技術

成田さんが飲食業に携わったのは18歳の頃。東京や札幌などの大都市で飲食店勤めを経験してきた。さまざまな出会いを経て20代後半になると、独立開業を志すようになる。その時に出会ったのが、札幌発祥の老舗珈琲店「宮越屋珈琲」だ。

「それまで、クラブやミュージックバーなどのバーテンダーとして、お酒に関わる仕事をしていました。そんなときに、自家焙煎したコーヒーをひとつひとつしっかり抽出して、美しいカップでゆっくりした時間を過ごしてもらいたい、というコンセプトの宮越屋珈琲に、空間も含めてすごく魅力を感じたんです」

マスターがやっていた深煎りコーヒーのネルドリップを見て『カッコいいなぁ』とそのまま弟子入りしたという成田さんは、宮越屋珈琲の雰囲気づくりなども日々学びながら、ドリップから焙煎、豆選びまで、コーヒーと一言で言っても非常に幅が広いことを知り、さらにのめり込んでいった。そして、4年間の修行を経て同じ場所にコーヒーショップ「Marley」をオープンした。

サードウェーブコーヒーとワインの共通点

老舗喫茶店で修行したと聞けば、Marleyの店舗の雰囲気や深煎りコーヒーが中心という点も納得できる。しかし、単に伝統を受け継いだというだけではないところが成田さんらしいところ。シングルオリジンのスペシャルティコーヒーを浅煎りで、という当時の流行に対して、Marley独自のアプローチで挑んでいった。

「浅煎りスペシャルティコーヒーというのは10年くらい前から流行り始めて、私も仕事柄よく東京などで飲んでいました。すごく美しい色と、クリーンな酸味や香りのコーヒーが今も人気ですよね。

ただ、私としてはそんなスペシャルティコーヒーの豆に、もう少し火を入れてアンダーをしっかり出しています。するとすごく幅が出て、きれいな酸味からしっかりしたコーヒーらしさまで味わえるんです」


こういったスペシャルティコーヒーの扱い方は、ワインにも例えられるという。

「明るい酸と香りを持つナチュラルワインの流行が、サードウェーブコーヒーの浅煎り文化ととても似ていると思ったんです。かといって、クラシックなボルドーとかブルゴーニュのような美しさのワインも人気ですよね」

シティローストで引き出す、こだわりの「甘さ」

Marleyでは東京産機の2kg釜の焙煎機を店内に設置し、時には業務中にも焙煎している。焙煎度は豆に合わせてはいるものの、浅くてもシティローストという“深煎り派”だ。


「うちの深煎りの理由は、もう圧倒的に『甘さ』です。抽出温度を68℃くらいで出すこともあるんですが、それくらいの温度だとすごく甘く感じられるんです。おそらくCROWD ROASTERのユーザーさんは、スペシャルティコーヒーでも浅煎りのきれいなコーヒーを飲むことが多いと思うので、逆にうちのコーヒーを飲むと、同じ豆でも結構ボディがしっかりあるんだなと感じられると思います。

『スペシャルティでもこれくらい深煎りすることもあるんだね』『ちょっと他のコーヒーショップとは違うね』という声をいただくことも多いです」

札幌らしいクラシックなコーヒーを届けたい

深煎りに強くこだわっている成田さんではあるが、13年前にMarleyをオープンした時には、それまでの宮越屋珈琲と比べて、地元の方々から否定的な声もあったという。

「自家焙煎を始めて、深煎りも残しながらも徐々に中煎りくらいの酸味がきれいなコーヒーも出していきました。最初は結構馴染めない方もいらっしゃいましたね。ぬるめのコーヒーというのも嫌がられました。ただ、少し時間はかかりましたが、だんだん馴染んでいただけました」

焙煎技術については、完全に独学での試行錯誤で身につけたもの。とはいえ、世界中からさまざまな豆を取り寄せては試し、触れていない国・農園の豆はほとんどないという。

そして、CROWD ROASTERへの参加については、ユーザーからのリクエストに対しても「札幌らしい深煎りを届けたい」と成田さん。

「CROWD ROASTERにそろっている高品質で最先端なスペシャルティコーヒーの豆を使って、ちょっとクラシックなというか、アンダーがしっかりしたシティローストの札幌っぽいクラシックさを伝えたいですね。酸味と苦味のバランスを味わっていただきたいと思っています」

CROWD ROASTERに参加いただいている焙煎士の中でも、北海道初にしてシティローストの申し子とも言える成田さん。札幌ならではのクラシックな味わいをぜひさまざまな豆をリクエストして楽しんでほしい。

 

SHOP INFORMATION
coffee&chocolate Marley(コーヒーアンドチョコレート マーレイ)
本店:北海道札幌市中央区南5条西5丁目10
東店:北海道札幌市中央区南4条西2丁目8-9 リディアビル2F
OPEN : 15:00〜2:00

※成田学さんのCROWD ROASTERへの参加は、2024年6月頃を予定しています。

北海道立近代美術館にて、Marley成田さんによるスペシャルコーヒーを提供

2024年5月4日(土)〜6日(月)の3日間限定で、特別展「琳派×アニメ」展〜尾形光琳、神坂雪佳から鉄腕アトム、リラックマ、初音ミクまで〜 が開催中の北海道立近代美術館にて、CROWD ROASTERは、ポップアップカフェをプロデュース。そこでMarleyの成田学さんに、コーヒーを焙煎・抽出していただけることになった。

提供するコーヒーは、展示からインスピレーションを得たブレンドやシングルオリジンコーヒーなど。あわせて楽しめるフード・スイーツメニューは、札幌円山にある和食の自然派ワインの名店「maruyama 檀」が提供。

このGWに、ぜひ展示とともにCROWD ROASTERのコーヒーとフードを楽しんでみては?

CROWD ROASTER プロデュース 「琳派×アニメ展 スペシャルコラボカフェ」
会場:北海道立近代美術館(札幌市中央区北1条西17丁目)
2階 特設カフェ
開催日:5月4日(土)〜6日(月)
営業時間:10:00〜17:00