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コーヒーで笑顔になる大会を。The Barista League Asia 2026、東京再上陸(レポート前編)

2026年6月11日(木)。東京・下北沢のADRIFTに、コーヒー業界の熱量が集まった。The Barista League Asia(バリスタリーグ アジア)2026──昨年の東京初開催から1年、世界各地でコーヒーの競技イベントを展開するThe Barista League(TBL)が、ふたたび日本の地に戻ってきた。


ポートランド発のコーヒーキュレーションサイトが選ぶ、2024/2025年の「Sprudgie Awards」では、Notable Event部門のHonoreeとして世界的に高く評価されているバリスタリーグ。今回、一次審査のジャッジとして大会に関わったCROWD ROASTER 山本が、主催者・審査員・競技者に直接話を聞いた。前編は、このイベントを支える人たちの言葉から、バリスタリーグの理念と2回目の東京開催で見えてきた進化を届ける。

バリスタリーグとは何か、なぜ東京なのか

The Barista League(TBL)は、2015年にオーストラリア出身のスティーブ・モロニーによって創設された。スウェーデン全国バリスタ選手権で優勝し、World Barista Championship(WBC)に出場した経験を持つ彼が、その競技会を経て描いたのは、まったく別のかたちのコンペティションだった。

TBLのプロジェクトマネージャー、Vasileia Fanarioti(ヴァシレイア・ファナリオティ)が語る。

「バリスタリーグは、コミュニティ・インクルーシビティ(包括性)・アクセシビリティを中心に置いた大会です。誰でも使える機材を揃え、誰でも競技のアドバイスを受けられるようにし、ルールを明確にする。そして参加者が『競い合う相手』ではなく『途中で友人になる仲間』として感じられるコミュニティを作る。それがビジョンでした。11年経った今、コミュニティがそれに応えた結果がここにあります」

現在、TBLは6大陸でイベントを展開している。そのなかで東京が選ばれた理由を、ヴァシレイアは迷わず答えた。

「私たちにとって全く迷いがなかった。ここのコーヒーシーンは本当に刺激的で、私の意見ではアジアで最もエキサイティングなコーヒーシーンです。去年の日本コミュニティの反響は本当に圧倒的で、今でも私個人として一番好きなイベントです」



昨年の東京初開催では、私、山本はアンバサダーとして関わっていた。海外のコーヒーカルチャーに感度の高い人以外にはなかなか知られていなくて、チケットが売れるか心配だった。それでも蓋を開けてみれば大成功。

その実績が今年につながった。2年目の東京開催では、関わる人も、注目する人も、明らかに層が厚くなっていた。

開幕10分前の確信

イベント開始直前、ヴァシレイアをつかまえて話を聞いた。あと10分で扉が開くというタイミングだ。

「すでに成功していると思います。会場が満員になって、笑顔があふれることで実感できるとは思いますが、観客だけではなくて、バリスタも、審査員も、ロースターも、パートナーも、私のチームも──エネルギーはすでにそこにあります。日本に降り立った瞬間からずっとそれを感じていて、今あと10分で扉が開きますが、もうすでに成功だと確信しています」

今年の変化のひとつが、ライブ配信体制のグレードアップだ。昨年は参加者が自分たちで映像を撮り合っていた。今年はプロの撮影クルーが入り、ワールドワイドにリアルタイム配信された。会場に来られない人にもステージを届けるこの取り組みは、バリスタリーグが目指す「アクセシビリティ」の具体的な一歩でもある。

ヴァシレイアはその先の可能性についても語った。

「このイベントの本当のポテンシャルを理解したパートナーが現れて、財政的に強くサポートしてくれたとしたら──より良い撮影クルー、ソーシャルメディアでのより広い発信、より多くのコンテンツ、チームの強化ができる。リソースが増えれば増えるほど、私たちは自分たちの得意なことをもっと上手くできる」

今年は、昨年より早い14時スタートという時間帯・平日での開催となった。観覧者数は昨年に比べてやや少なかったように感じられたが、来場者の熱量は確かなものがあった。



規模を拡大して帰ってきたRoasters Village

今年のバリスタリーグで、もうひとつ昨年との違いが際立ったのがRoasters Villageだ。昨年も会場内でロースターが出店する形はあったが、今年は規模が大きくなり、会場前の広いスペースへと拡張。全国から実力派ロースターが集まり、競技観戦とコーヒー体験を同時に楽しめる場となった。



今年の出店ロースターは以下の10店舗。

Allpress Espresso Japan(東京)
・Weekenders Coffee(京都)
・ULT Coffee Roasters(大阪)
・Shimaji Coffee(広島)
・Bokka(埼玉)
・Island Stone Coffee Roasters(宇都宮)
・Days Coffee Roasters(新潟)
・Node Coffee(札幌)
・Nakamura Coffee(伊勢)
・Terasaki Coffee(甲府)

北は札幌から南は広島まで、日本各地のロースターが一堂に会するこの光景は、バリスタリーグが競技会を超えた「コーヒーコミュニティの祭り」であることを体現していた。

今年の審査員のひとりであり、2023年世界バリスタチャンピオンのBoram Um(ボラン・ウム)もこのエリアに強い印象を受けたと語る。

「ロースタービレッジがあって、食べ物もあって、コーヒーコミュニティが一堂に集まっている。コミュニティをポジティブに称え、発信できる機会が増えるほど、それが僕たちの未来になると思います」

普段はそれぞれの街でコーヒーに向き合っているロースターたちが、一日だけ同じ場所に集まる。競技が終わったあとも、ロースター同士・競技者・観覧者の間でコーヒーをめぐる会話が続く。このイベントが「コーヒーコミュニティ全体のもの」である理由は、このエリアに凝縮されていた。

一次審査ジャッジとして感じたこと

今年、私は一次審査のジャッジとしてこの大会に関わった。世界的に注目されるイベントの選考に携われたことを、嬉しく思っている。

バリスタリーグは「誰でも参加できる」大会だ。経験の有無を問わず、コーヒーへの情熱と創造性があればエントリーの門は開かれている。

ただ、だからこそ強く思うことがある。「誰でも参加できる」ということは、「本気で参加する理由を自分で見つけなければならない」ということでもある。このステージは、「コーヒー業界の明るい未来とはどんなものか」という問いに向き合う場だ。世界に向けて発信されるこのコンペで自分のコーヒーを語るなら、その問いを真剣に考えたうえで臨んでほしい──。一次審査を終えて、そう感じた。

ジャッジたちが語る「バリスタリーグでしかできないこと」

今年の本戦の審査員陣は豪華な顔ぶれが揃った。


石井康雄(LEAVES COFFEE ROASTERS)、Boram Um(2023年世界バリスタチャンピオン)、鈴木樹(2017年WBC準優勝)、深山晋作(2016年ラテアート世界チャンピオン)、Thuy Nguyen(Qグレーダー・SCAセンサリープロ)の5名が審査を担当。

MCには2014年世界バリスタチャンピオン・井崎英典、STANDART日本語版編集長の室本寿和が立った。


2年連続でジャッジを務めた、CROWD ROASTER参加焙煎士でもある石井康雄さんは、今年の大会の進化をこう語る。

「今年は2回目ということで、液体のクオリティがさらに上がっていて、すごく印象的でしたね。こういう誰にでも開かれた大会だからこそ、ちゃんとクオリティを担保していくことが大事かなと思っていて。その点で言うと今回はカメラが入ったり、ワールドワイドでライブ配信したりと、すごくグレードアップしていたなと感じましたね」


そして石井さんが何より強調するのは、この大会固有の「空気」だ。

「コーヒーを通して、笑いだったり、コーヒーに対する愛情みたいなのを一番表せる大会じゃないかなと思っています。本当に参加者たちがめちゃくちゃ楽しいし、ジャッジ側も楽しい。本当に最高なんですよ」

「また来年もぜひやってほしいですね。その時にはきっとまたジャッジオファーが来ると思いますが」という私の問いかけに、石井さんは即座に答えた。「ぜひ、私でよければ!」


今年初めてバリスタリーグのジャッジを務めたBoram Umは、他の競技会との違いをこう語る。

「バリスタリーグは少し楽しくてリラックスした雰囲気がある一方で、評価軸はしっかりと構造化されています。日常のカフェ体験により近い感覚があって、そこがいいですね」

コーヒーの競技会は誰のためのものか

年々専門化が進むコーヒーの競技会。その方向性に対して、バリスタリーグはひとつの答えを示そうとしている。

ヴァシレイアはこう話す。「競技会というのは、プロがステージに上がって『自分のフィールドの最高峰』を見せる場だと思います。シェフでもバーテンダーでもバリスタでも同じで、それが必ずしも消費者にとって身近なものとは限らない」

ただ、TBLが目指すのはその先だ。

「私たちがやろうとしているのは、消費者にもそのチャンスを与えること。例えば私は料理コンテスト番組のマスターシェフを観ますが、彼らと同じように料理するわけじゃない。でも楽しく観られる。それと同じで、コーヒーの世界を楽しくアクセスしやすい形で届けたいんです」


Boram Umは、今のバリスタリーグを日本の文脈に置いてこう評価する。

「このイベントは素晴らしいティーザーだと思います。特に来年は東京でWBC(世界バリスタ選手権)が開催されますし。私の見る限り、日本はアジアのコーヒーシーンにおいて、消費の質とカルチャーの両面でトップを走っています。今後も日本はアジア市場をリードし続けるでしょう」

2027年のWBC東京開催が決定しているいま、バリスタリーグ アジア 2026は、その前哨戦としても大きな意味を持っている。

後編では、ステージに立った競技者たちの声を届ける。2年連続優勝を果たしたSurf Coffeeをはじめ、kurasu所属のTHE FLOATERS、鹿児島から初出場のTHE VOLCANO BROTHERSが語ったこと──コーヒーと挑戦、そしてその先にあるものについて。

後編は...
2年連続優勝・Surf Coffeeが語る、コーヒーと旅と、東京のステージ(後編)


取材・文:CROWD ROASTER 山本翔平

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